馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

アニメ3期「ウマ娘」11話。最初に思った感想と、賛否両論を見た後の考えを語る。

 困ったな…。個々のパーツはいいものの、全体としてストーリーがちぐはぐになっている。
 史実では「結局のところ謎」だった宝塚記念の凡走を、ゴルシの現役晩年と重ねて「衰え」「ピークを過ぎた」ことにしたようだ、アニメ3期。

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 この要素投入で、引退までのストーリー構成も見えてきた。ラストラン有馬記念の実況は、もちろん「これがウマ娘の引き際だ~~!!」ですね。


 しかし、史実に則って言うと、とりあえず海外遠征を撤回して、夏を十分な休養にあてると、キタサンブラックも復調し、だから天皇賞・秋で挽回勝利できたといえる。

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 率直に言って、台風による極悪不良馬場の中、しかも出遅れて「絶体絶命か」と思われた中、抜け出して勝つことがピーク過ぎの馬にできるわけない。
 まぁその、いちファンとしての史実解釈は置いといても、アニメ3期ではキタサンブラックがG1勝ったのに曇った独白をするという、奇妙な話を見せられている。

 くり返すと、個々のパーツはよかった。泥まみれで競り合うキタサンブラックサトノクラウンのレースシーンは迫力があった。

 

 しかしストーリーは、4歳古馬ウマ娘でいうシニア級になってから、筋道のあやふやな「上げて落とす」のくり返しになっている。
 まず、史実を1年前倒ししているけど、ハードトレーニングをこなして天皇賞・春に勝った。(レースカットは惜しいけど)これはこれでいいとして、次の宝塚記念ドゥラメンテと再戦、シニア級では初対戦となり、3着に負けた。

 史実通りの結果だけれど、このときキタちゃんの言った「だれーー!?」という軽薄なセリフが、視聴者から「畜生発言」などと批判された。
 個人的には「だれー!?」よりも、ノーマークだったリバーライト(マリアライト)に負けたことの反省や、負けを教訓に次のレースに臨むという過程もなく、さっと次にジャパンカップを勝った(またレースカット)ことの方が問題だった。

 ※あんまりシングレを持ち上げてアニメ3期を叩きたくないんだけど(ゆっくり競馬の人は言い過ぎ)、少なくとも「シンデレラグレイ」では、主人公のオグリだけじゃなく主要なウマ娘が、負けたことをそれぞれ気にして、心の整理をつけたり挽回を模索し、次のレースに臨むという順序を踏んでいる。

 一方で、有馬でサトノダイヤモンドに負けると、それを引きずるちぐはぐぶり。
 一応理由はある。ダイヤちゃんは、凱旋門賞挑戦という「高い目標」を持っていて、「キラキラしている」からで、ドゥラメンテに対してもそれを感じていた。

 「G1・3勝で、年度代表ウマ娘にもなった(学園祭の時に、ルドルフ会長が言及)が、G1・2勝のウマ娘二人に対して、なんでそんな卑屈に…」と史実を思えば違和感があるものの、そこは無視しよう。
 いや、無視しても、リバーライトにかかわる描写はあんまりだったな。キタサンにとってリバーライトは、しょせん「誰?」のままで、眼中にないってことになる。前にも言ったが、あれじゃあ史実改変で宝塚をスキップしてた方がよかった。

 中盤は「主人公が成長しない」と、視聴者の評価を下げてしまった印象。

 終盤に入って、サトノダイヤモンドとの関係や、「衰え」に直面するキタサンなど、とりあえず話のだらっとした感じがなくなって、シュっと締まってきた。

他の人の感想とか見た後

 アニメ3期11話の「ピークを過ぎた」「ピークアウト」描写、批判派が私ふくめて当時キタサンの走りを見た印象と、他ファンの反応を見たリアタイ勢が多いのに対し、擁護派は「馬主の北島三郎氏が、脚本に目を通して許可を出している」と制作の内情面から納得している。
 とにかく賛否両論ってことね。

 「ピークアウト」が無根拠なオリジナル描写ってわけでもないなら、あとはまぁ好みの問題なんかな。

 さっき批判した「秋天勝ったのに曇らせ」も、私がついつい史実に引きずられてお気持ち表明してる痛い競馬ファンなのかもしれない。

 

 しかしそうなると、リバーライトの扱いは、名前を変えたモブウマ娘なんで馬主の許可取ってるはずないし、「宝塚からJCまでの描き方がダメ」って感想は変わらないな(鋼の意思)。