馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

変幻自在の馬、ゼロかイチかの栄光 ――アグネスデジタルと白井寿昭調教師。※加筆修正あり

 ウマ娘に合わせようとするから、書き方が難しくなる…、という平凡なことに気付いてしまい、そこで特に関係なく語る。
 今回はアグネスデジタルを書こうかと…、あ、やっぱウマ娘に絡むっち馬だっち。

 
 デジタルは不思議な馬です。もちろんあの特殊で、変則的なローテーションも不思議の一つだけど、ファン及び馬券師から見て、「勝ちパターンが分からない」という不思議さがあってねぇ。

 
 初の芝レース勝利であり、初のG1制覇となったマイルCSは、18頭中15番手という後方から豪脚を見せて勝利。ダートのマイルCS南部杯と、芝の香港カップでは、前を行って後続を寄せ付けなかったが、間にある天皇賞・秋と最後の勝利になった安田記念では、また末脚勝負の追い込みをしている。
 勝利したレースの中で、マイルCSと安田は、マイル戦の常として速いペースで進んだが、秋天は雨で重馬場に加え、逃げ馬のサイレントハンターが出遅れたことによって、スローペースになっていた。
 じゃあデジタルという馬は、ハイペースで勝てるし、スローもいけるし、先行も差しも自在なのか? 

 ところが生涯成績とレースを見ると、いいところのない凡走も目立つ。これといった法則性が見いだせない。

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ダートを取り巻く環境

 芝とダート双方のG1(級)レースを制した先駆者というと、悲劇の名牝ホクトベガがいる。
 しかし、ホクトベガの時代は、まだ地方の大レースに中央との統一Gが導入されていなかったため、(アグネスデジタルも勝っている)マイルCS南部杯が、「G1」と言えないんだよ。(ホクトベガが勝ちまくった次の年、地方の大レースが次々と統一G1に認定される。1年違いに過ぎない)

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 それからまた、当時の中央競馬に「芝至上主義」の風潮があり、アマゾンスピリット風に言うと「芝で勝てない落伍者救済」の意味合いがあった。
 ホクトベガも、成績が頭打ちになったため、気分転換を狙って地方のダートを走らせたらはまったに過ぎない。
 アドマイヤドンは、ホクトベガよりずっと早い切り替えだったが、そういう陣営の試行錯誤を感じる。クロフネのダート出走は、もっと偶然の産物だった。

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 私もファンも、ホクトベガ時代から「ダートが強いならダートも走ればいいじゃない」と思っていたけれど、プロの考えではそーもいかないようだ。
 プロデビュー時の大谷翔平選手も、ベテラン、辛口の評論家ほど「二刀流なんてやめろ」「無謀」といってたからな~。元プロ、評論家だからこそ陥る固定観念があるのかもしれない。
 そんな中、アグネスデジタル(の陣営、主に白井寿昭調教師)は…、なぜか自由だった。

ナリタブライアンの栄光と蹉跌

 無難でないレース選択というのは、的を外せば「なんで出したんだ」という批判が付きまとう。
 ナリタブライアン高松宮杯出走がそうだった。一部のファンには、「適正別にレースが分かれた現在だからこそ、ナリブの挑戦に意義がある」と理解を示す人もいたが、圧倒的意見は「出すなよ」だった。
 高松宮杯4着そのものよりも、その後屈腱炎を発症して引退することになったのが、後味を悪くしたと思う。「ナリタブライアンほどの名馬が、最後になったレースが高松宮杯(記念)4着か…」と。

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 名馬のレース選択が、ますます慎重に、理にかなっているが、意外性とか面白みのない現在、デジタルの「自由さ」が、ただまぶしい。

参考文献

 

 

 

 

動画

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