馬と鹿と

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

世界ひろし。玄人好み。昨日今日初めて知った、劇場アニメ「鹿の王」を見た感想。

 ネットフリックスで、アニメの新着作品に「鹿の王」ってのがあったんで、気になって調べてみた。

ja.wikipedia.org

 ふんふん、ウィキペ丸写しで申し訳ないンスゲートが、

 "本作は、2015年度の本屋大賞と日本医療小説大賞をダブル受賞し、シリーズ累計250万部を突破した上橋菜穂子のベストセラー小説『鹿の王』を劇場アニメ化"

 "監督は、スタジオジブリの『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』、そして新海誠の『君の名は。』という邦画の歴代興行収入ランキング上位5作品のうち3作品でキャラクターデザインや作画監督を務めた国内トップアニメーターの一人である安藤雅司と、(長いんで中略)制作は『攻殻機動隊』シリーズなどで知られるProduction I.Gが担当"

 …と、すご原作にすごクリエイターが集結したことは分かった。

 

 2022年公開、なんだけど、当時話題になり、俺に話題が流れてきた記憶がまるでない。もちろん、俺の狭いアンテナが世界のすべてなわきゃーない。世界ひろし。

 ただ、実際に見てみると、すごくクオリティーが高くて、ネームバリューからの期待値を裏切らないものの、「俺に近いオタクな層」「普段アニメを見ない一般人(俺の家族とか)」にかすらなかった理由が、よぅわかった。

 大ヒットをよく知っているスパイファミリーとか鬼滅とか、今ならダンジョン飯かなぁ、それらに共通する「軽み」「分かりやすさ」がない。

 

 架空世界を緻密に描き、のっけから架空の固有名詞がバンバン出てくる。
分かりやすい説明は、冒頭の短いテロップだけで、それを頭に入れ、さらに出てくる固有名詞を脳内で整理しつつ見ないと、分かりづらくてしんどい。

 少なくとも俺は、はじめ辛抱して見ていた。途中から、まぁ世界観や人間関係がなじんでくるというか、繰り返し出る固有名詞が「なんとなく」わかってきた。
 視覚情報によってなんとなくわかるのは、映像作品のいいとこ。
 とはいっても、最後まで襟を正してみるような、まじめな話。

 

 随所に「もののけ姫」の経験をうかがわせる、スピーディーな騎馬(この作品内では、馬でなく架空の「飛鹿」と「山犬」。ヤックルに相当する乗って移動できる動物)移動シーンなど、ケレン味もある。
 しかし、それを「楽しい」と感じている余裕がないほどシリアス。
 まぁ、もののけ姫もそういうんだったな。

鹿と空いたままの口

 たとえば、主人公格のキャラクター・ヴァンと、ヴァン以外に生き残っていたところを保護され、ヴァンと親子的関係になっていく少女・ユナ。
 ユナはかわいいんだけど、それはアーニャのかわいさとは違う。リアル子供の動き・しぐさでかわいかった。
 もちろん、どっちがいいとか悪いじゃなくて、作品性の違いだ。

 ユナは、もぞもぞと動いてヴァンに近づく、いつも締まりのない顔をしている、といった様子で視聴者をほっこりさせる。アーニャのように、漫画チックに面白い顔はしない。

 

 終盤の方の何気ないシーンだけど、鹿に乗っているヴァンと、その前に乗っているユナ。

 アニメ制作アニメの秀作「SHIROBAKO」では、伝説といわれるベテランアニメーターが、若手に馬の書き方を「横移動だけじゃなくて、上下運動にも気を付けること」と教えていた。

 競馬好きゆえ、俺も馬についてはちょっと知っている。まずあたりまえ体操として、馬は「前足を動かし、後ろ足を動かす」のくり返しで走る。
 その際、胴体も足の動きに合わせて伸縮したり、重心が移動し、乗っている人間は前後上下に揺さぶられる。
 馬が人を乗せてゆっくり歩くだけ(競馬用語では「乗り運動」)でも、騎乗者は揺さぶられる。

 ユナはいつものように、口を開けたまま鹿に乗っていた。
 そして「あ、あ」と声を出しており、鹿が歩くことによって体が揺さぶられ、開けっ放しの口から声が漏れたのだと分かる。
 ※リアルなら、口を噛む危険があるんで、きちっと口閉じておこう。

 

 いや、これたまたま俺がちょっと知ってるから気づいただけで、細かい描写がたくさんあるだろうな。
 要するに玄人好みっすね。