馬と鹿と

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

高校生の恋&青春だけでなく、社会人にも通じる人間関係の話としてお勧めする。アニメ「スキップとローファー」。

 原作未読勢が、アニメ「スキップとローファー」を7話まで見た感想。


 めちゃくちゃ好評な、歌詞の通り「かろやかに かろやかに」踊るOP、やわらかで温かみを感じる作画(特に風景がいい)と、こざかしい理屈抜きで「いい作品じゃん!」と分かるアニメ。

 勝手に唯一の難点だと思っているのが、語感のいい略称が浮かばないことで、とりあえず「スキロー」と言ってみたけど、「スシローみたい。いやぁ」と不評だった。いや、俺もスキローじゃない、いい略し方が無いかと思ってんだ。


 というわけで、弟Aにも勧めてみたのだが、かつて「ハチクロ」や、「君に届け」でさえ「(風早君のような男は)いねーよw」と突っ込み付きながら読んでいた弟Aが、「あー、そういう青春系の話、見る気がしなくてねー」と言って、とりつくシマがなかった。

 わいは「なんだそのオッサンみたいなコメントは!?」と驚愕したが、わいもかつてそういう理由で君に届けを見ていなかったから、偉そうなことを言えない。
 が、弟Aのように、「なんか評判がいいけど…、青春・恋愛のアニメでしょ?」と食わず嫌いしている人にこそ、自信を持ってお勧めしたい。

 

 物語の始まりは、地味な容姿、ちょっと天然でボケてる主人公の女の子・みつみ(本当に地味で、モブ女の子の方が可愛いくらい)が、「学年一モテてるイケメン」(登場人物の一人・江頭ミカの証言)の志摩くんと親しくなることから始まる。
 そこまでのあらすじは、テンプレ少女漫画だ。しかし、原作が少女漫画誌ではなく、カテゴリとしては青年漫画誌のアフタヌーンに連載されているだけあって、主人公がイケメンに好かれることに、丁寧な仕掛けが存在する。

 主人公のみつみちゃんには、「T大(つまり東大)に進学して、官僚になる」という大きな志がある。
 個人的な立身出世の野望ではなく、「地元をはじめとして、寂れゆく地方を活性化する仕事がしたい」と、きわめて社会的なビジョンを持って勉強している。
 別に「純然たる少女漫画」をディスるつもりはないんだけど、これまで主人公の真面目で優しい性格に基づいた人助け等が描かれることはあっても、「社会的な志」は珍しかった。まぁ学生の頃は、そういうもんだよな。


 で、イケメンだから他の女子たちから言い寄られまくっている志摩君が、「なんでみつみちゃん(だけ)に好意を持ってくれるのか」という、よく恋愛ものにまとわりつく疑問に、主人公の「志」が回答を与えている。
 原作未読のまま、PV情報などで憶測を重ねるのはあれなんだが、志摩君が「みつみちゃんだからこそ」なのは、かつて「母さんが喜んでくれるから」という理由で子役をやっていて、自分というものがなかった志摩君にとって、将来やりたいことのハッキリしているみつみちゃんが、「まぶしくて」(OPの歌詞)だからなんだ。

 

 年を取るほど、ただモテたいとか、イケメンをゲットしたいとか、色恋沙汰だけの人は痛く見えてしまう。
 志摩くんは元天才子役だったせいか、老成した対人意識と洞察力があり、そこが「志摩君とカップルになりたいだけ」の女子に興味を示さない理由だろう。
 リアルでも、20代前半くらいの新社会人だと、青春気分が抜けてないヒヨッコだったりするし、メインキャラの何人かは社会人に置き換えても通用する話をやっている。


 この手の話を大人が見ると、「あー、俺/私もこんなキラキラした青春を送りたかったなー」という感想を言うのが定番。

 中には「耳をすませば」とか「君の名は」のキラキラぶりが、猛毒として効いてしまう青春負け組も存在するらしい。(とあるCMでは、そういう人を「青春ゾンビ」と名付けてギャグにしていた)

 スキローも、ほぼそういうキラキラ系であるこたぁ否定しない。しかし、大人・社会人こそが、高校生よりも社会性のある「やりたいこと」を考えられるんじゃないか?
 スキローで「こんな青春を“送りたかった”」という、なんか後ろ向きの感想で終わるのはもったいない。もっと前向きに見よう!

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