馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

そのサディズムは、あくまで「強者」に向かう。アニメ「魔法少女にあこがれて」1~3話の感想。

 見た。
 最初は、なんのかんの理由をつけて、魔法少女のエ○い姿を見せるだけの同人誌ノリかと思った。
 女の子同士で百合物(LGBT、多様性)に偽装しても、BPO放送倫理・番組向上機構)はゴマかしきれんぞぉ…と思ったら、意外と話やキャラのバランスが良くて、エ○抜きでも続きが気になる作品になっちゃった。

 まさに今期のダークホース。規制に引っ掛かりそうなダークさと、意外な面白さのダブルミーニングで。

 

 主人公の柊うてなは、悪と戦い平和を守る魔法少女に、タイトル通り「あこがれて」いる。
 しかし「本当の君は…」と目を付けた悪の組織のマスコット(キュウベぇ的な、「何も知らぬ無知なる者を利用する」「吐き気を催す邪悪」系)によって、勝手に悪の組織の幹部(?)にさせられてしまう。

 うてなは実のところ、心の奥に魔法少女のような存在を「めちゃくちゃくにしたい」という欲望が潜む「真性のサディスト」だった。
 「魔法少女にあこがれて」は詐欺タイトルではなく、実際の内容を隠しつつ嘘も付いてない秀逸なセンスをしている。

 うてなが変身した「マジアベーゼ」の嗜虐心は、あくまで「強くてかっこいい」「+かわいい」対象にのみ向いていく。そこらへんの一般人に危害を加えることはなく、魔法少女だけにスイッチが入る。

 そのため、ストーリー上は強キャラ同士の限定バトルになり、おそろしく下品で卑猥な内容ながら、弱い者いじめということはなく、ぎりぎり陰湿にならない世界観を保っている。

 

 うてなのような、普段は平凡で、臆病なくらい優しい子を、悪の組織がたぶらかしていくのは、魔法少女に限らず、ヒーローものでよくある展開だ。
 平凡な人間の中に潜む、意志の弱さや悪への誘惑を引き出し、手ごまとしてヒーローをかく乱させる。
 そこを、ヒーローがなんかの力で洗脳を断ち切って、善の心を取り戻させる、というのがお約束の決着。

 ところが「まほあこ」では、そのお約束が逆転して、うてなの「心のリミッター」はどんどん外れていくし、魔法少女はそれを止められず無力な状況が続いている。
 原作を読めば先の話が分かるでしょうけど、なんか、うてな=マジアベーゼの「外れたリミッター」「心の闇」の方に、他キャラが飲み込まれていく展開しか想像できない…。

実は偽装してない「偽装ED」

youtu.be

 EDは、視聴者の間で「BPO提出用」「本編を浄化するきれいなED」などとネタにされているけれど、歌詞がなかなか巧妙。
 「主人公になりたい」のになれないコンプレックスを吐露する内容でありつつ、「本当は悪い子」である自分を肯定する内容。
 「汚いプリキュア」または「逆プリキュア」であることを、隠しているようで隠していないED曲。結局ごまかす気がねーー!!

変態同士の平和な世界?

 3話では、先に喧嘩を売ってきた組織の同僚・阿良河キウィに対しても、うてなのサディズムが覚醒した。
 決着がついた後、「今のあなたは世界一可愛いですよ」とは、心からのセリフだろう(だからヤバいんだけど)。

 後半で回想と語り入るけど、キウィは自撮りをUPしては「いいね」を欲しがり、はるかにバズってる魔法少女たちに嫉妬するという、幼稚なキャラだった。
 しかし、うてなから強火の「愛」を受けて、一転「世界中からバズられるより、うてなに愛されたい」という関係に。

 承認欲求モンスターと、愛がねじ曲がり過ぎなサディスト、まぁお似合いの二人かな…。