馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

「中国産のゲームはちょっと」? 中国嫌いの誤解を解いてあげる☆

 先月9月に日本配信が始まって、瞬く間に話題が広がっている「アズールレーン」。「世界の艦船を擬人化」という、「艦これ」のような(というか、まんま)テーマのSTG(シューティング)ゲームだ。
 ゲームとして面白いかどうかはさておき、「中国産のゲームをやるのはなぁ・・・」と「中国が嫌いだから」気が進まない保守的オタクもいるようだ。そこで、東アジア物知り兄貴の私が、中国にまつわる誤解を解いてしんぜよう。
 まず中国といえば、「反日」だ。かつては石橋湛山とか、今でも半藤一利氏とか、年配の人には「まだ若い国だから」「発展途上国だから」と大目に見る人もいるが、中国も今や世界第2位の経済大国である。かつて中国共産党は、「人民が卵と肉を食べられること」を目標にしていたが、それを毎日食べているような中国の若者が、「第二次世界大戦で日本は~」と言い続けることに、違和感を抱く人は多かろう。
 だがそもそも、中国は国土が広く、大小50の民族が存在し、価値観もいろいろと違う。反日デモや暴動に「計1万人が参加していた」と報道されると、すごい人数に見えるが、人口13億の中国では、日本でいえば「安倍はヒトラー」という横断幕で国会前を練り歩いている人くらいわずかな数だ。
 「反日」と並んで、偏見が強いのが「パクリ」だ。中国は日本の漫画・アニメ、サブカルチャーを丸パクリしている…、というのが、オタクの皮膚感覚として、反日以上に許せないだろう。
 だが、待ってほしい。今では中国でも、正式なライセンスを取得した日本漫画などの翻訳が普及し、中国のオタクたちも粗悪なパクリに厳しくなった。象徴的なのが、福島香織「本当は日本が大好きな中国人」(朝日新書)に紹介されている郭敬明をめぐる騒動だ。(「朝日の本じゃないか」と思うなかれ。作者は元産経新聞の記者だ。)
 郭敬明は中国の若手人気作家だが、たびたび日本作品のパクリ疑惑が指摘され、要するに「表面的に日本文化をパクッて人気」の三文文士として、強烈なアンチの中国人も多い。

 中国では、海賊版の時代から「銀河英雄伝説」に熱烈なファンが多かったが、2006年に正規版が出た。中国の出版社は当初、正規版の序文を郭敬明に書かせようとしたのだが、この情報が銀英伝ファンの間に伝わると、猛反発が起こって、撤回された。また、表紙を担当するはずだった郭敬明プロダクションのお抱えデザイナーは、謝罪する事態にまで発展する。(第3章)
 周知のとおり、中国で政治は独裁が続いているが、経済は自由化が進んでいる。「反日」を国単位、国民単位でみるのではなく、個々の企業や人を見るべきだ。一部の人間を取り上げて、国単位の責任を問うべきではない。
 君はここまで言われても、「艦これ」をやっていながら、「アズールレーン」ができないのか?

 

 

本当は日本が大好きな中国人 (朝日新書)

本当は日本が大好きな中国人 (朝日新書)