アニメ「アンデッドガール・マーダーファルス」の最新9話は、鳥籠使い一行が、ダイヤの暗号を手掛かりにドイツ南部へ向かう。「人狼」が住むという隠れ里を探している中、まず小さな村で起きた連続殺人事件を「解決してくれ」と頼まれる…。
どうしても1回20分余り(OPとED映像をのぞいたら、ほぼ20分か)のアニメでは、ストーリーの進みが遅い。吸血鬼編では事件の真相までじれったかったし、VSルパン編では、更に待ち遠しくなった。
…というわけで、我慢できなくなった私は、「あ、原作小説を買って読めばいいじゃん」(コミカライズの方は、人狼事件まで行ってない模様)という至極シンプルな方法に気付き、3巻を買った。3巻まるまる一冊が、人狼編となっている。
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実は私、小説が苦手なもんで、普段読むことはない。そんな私でも、続きが気になって「ページをめくる手が止まらない」まま、一気に読み終えた。
面白い。作者プロフに「鮎川哲也賞を受賞」し、出版社の紹介文に「新時代の本格ミステリ作家として注目を集めている」と書かれているのはダテじゃねぇ。
いや、私自身は鮎川哲也作品を1つも読んでないのだけど、弟Aが鮎川作品を「面白い」といってたんで、弟Aは気に入るだろうなこりゃ、と思ってアンデッドガールズをおすすめしておいた。
(アニメは解決編まで何週もかかるんで、終わってから一気見した方がいいかも、と言い添えて)
アンファルの勢力関係図
面白さの詳細を話すほど、アニメ初見勢にはネタバレになるし、書くのもかったるいんでやめておく。
勢力関係の話だけ、ちょいと。
ダイヤ「最後から2番目の夜」を巡る、VSルパン編は、ルパンにホームズとアヤたち探偵&警察組だけでなく、ロイスエージェント、モリアーティ一味も加わる乱戦となった。
今回の人狼編では、ルパン勢が絡まず、前回の「よつどもえ」から「三つ巴」くらいに整理されている。
この関係図で重要なのは、アヤ(一行)には「体を取り戻す」というモリアーティと戦うはっきりした理由があるものの、モリアーティ側にとっては、せいぜい「我々の計画を邪魔するやつら」程度なことだ(それすらもホームズに比べると、アヤに阻止するという強い意志を感じない)。
殺人鬼のジャックや、愉快犯でやっぱり殺人鬼なアレイスター・クロウリーなど、手下が各々勝手に戦いを好んでいるだけ。
そんな中、「フランケンシュタイン」で有名な人造人間・ヴィクターだけが、原典を踏まえてか、理性的な思考をしていて、人間的な良心も残っている(見た目は一番怪物してるけど、そのギャップもオマージュか)。
そのため、人狼編では、ヴィクターと津軽が無駄に争わず、共闘関係になる一幕も。それが次への糸口になるようで…。
余談
「怪物」であれば、エリック(怪人ファントム)もヴィクターも津軽も、すべて始末したいロイスエージェントの方が、かなり見境ない。
アマゾンのレビューで、「ロイス(のやつら)いらない」というのもあって、むべなるかな、現状ストーリーの引っかき回し役に過ぎないし、キャラ造形も悪い意味でラノベしてて、19世紀ヨーロッパの世界観から浮いている。(アニメのファティマちゃんとか、デザインはいいと思うけど、すぐやられたし)
人狼編では、怪物狩りに精を出す理由が、「怪物は醜いから」という、「ルッキズム」なんてカタカナ語を使うまでもない差別主義のロイスエージェントが登場。
ステレオタイプで、キャラとしての魅力はないが、まぁさっき貼った名著「フランケンシュタイン」解説でも読んでちょ。
ヴィクター・フランケンシュタイン博士の作った怪物(怪物に名前はない。名無しが不便なため、通俗的には博士の名前を取って「フランケンシュタイン」と呼ばれるようになったか。「アンデッドガールズ」では、ファーストネームの方になっている)は、まさに「姿が醜いから」というだけで人間たちから迫害を受け、人類に復讐を決意する哀しき人造生物よ。
ただ、エピローグ部分で、津軽が怪物として下種な民衆に面白がられつつ、差別されていたことを描いているわけだし、念押しでロイスエージェントのような怪物差別者たちを登場させ続ける必要ある? という指摘はできる。
まぁそれより、読者から一番多いリクエストは「もっと早いペースで続き書いて!」なんだけど。
原作は4巻までしか出ておらず、アニメ2期があるとしたら、原作のストックがたまってからになるな。
まだアンデッドガールズとか完結してないシリーズを抱えながら、別作品の原作を始めたりと、あんたは田中芳樹氏(又は)佐藤大輔氏かーい! と言いたくなる。