馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

女性の就業者数が増えながら、実質GDPが横ばいであることは何を示すのか?

 安倍政権のもとで、「就業者数が増えた。雇用が改善した」と誇られてきたが、その実態は相当疑わしい。

 リベラル系の経済学者・小野善康氏は、第二次安倍政権が発足した直後の2013年以降、男性の就業者数が伸びず、もっぱら女性の就業者数だけが伸びていることに着目する。
 女性労働者が増えたことは、表面的には安倍政権の掲げる「女性が輝く社会」が実現しているように見える。だが、共働き家庭が増えれば、子供を預ける保育園の需要が増すのに、一方で賃金は上がっていない。なので、幼い子供を抱える家庭は、保育園の負担分貧しくなってしまう。
 (ちなみに、これが数だけでは保育園が増え続けているのに、「保育園不足」が起こるカラクリであろう。)

 
 安倍政権は、2017年に幼保無償化を掲げて解散総選挙を行ったが、最近の記事にあったように、消費増税2%分の半分は、国の借金返済に使われてしまった。これじゃあ幼稚園・保育園が無償化されても、子育て世帯の生活が楽になるわけがない。
 さらに、保育士が増えれば、それまで家内労働(金銭に換算されない専業主婦の家事・育児など)だった保育が、GDPに組み入れられる活動になったはず。なのに、実質GDPは横ばいになっている。
 つまり、日本経済は、保育士が増えたにもかかわらずGDPが横ばいなので、その分生産性が落ちている。(「消費低迷と日本経済」91~94ページ)え、それって経済がよくなってないよね。
 

 
 「消費低迷と日本経済」。小野氏は消費増税を支持していて、その点についてはどうもモニョるのだが、鋭い分析がいっぱい載っている。
 小野氏によれば、消費税増税分を社会保障に使えば、給与として国民の所得になったり、消費されるお金の総量は変わらないので、景気の冷え込みはない、と断言する(145~146ページ)。

 まぁ、さっきもいったようにそれが半分は借金返済に使われてたんですが…。財政再建派の執念で借金返済に回されたんだろうが、それで国民の生活が豊かになるわけではない。本当に余計なことをしてくれたもんだ。

 参考。

 

消費低迷と日本経済 (朝日新書)

消費低迷と日本経済 (朝日新書)

  • 作者:小野善康
  • 発売日: 2017/11/13
  • メディア: 新書
 

 

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