馬と鹿と野と郎の日記

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

病院で処方される保湿剤や風邪薬が、全額自己負担に? イギリスの失敗を繰り返すな。

 前にも報道があったが、また検討されているらしい。
 景気対策として法人税を下げた政府が、患者の自己負担は増額するという。全く素晴らしい再分配(嘲笑)政策で、桜を見る会で公私混同や予算の膨張が問題になっているタイミングとは思えない政治センスも素晴らしい。
 「全世代型社会保障」っつって、幼稚園・保育園の無償化のために増税するって、解散総選挙までやったのに、自己負担が増えるというなら、何のために増税したの? 一流大学を出た政治家と官僚様は、足し算と引き算もできないの? この国の役人は、シュレッダーで書類を裁断するのにちんたら時間をかける一方、社会保障費を減らして弱者を抹殺する使命を負わされているらしい。

 
 ツイートの中には、「病院で処方される保湿剤に美肌効果があるという噂が広まって、皮膚科に行く人が増えた」といっている。前にテレビニュースでも、「病院の保湿剤の方が効く」という女性の話が出ていて、本当なのかもしれない。
 しかし、病気でもないのに薬が処方される場合、市民のモラルもあるだろうが、医者の職務怠慢ではないだろうか。技量の低い医者が、安易に薬を出しすぎる問題はあるかもしれない。が、薬の自己負担を増やしても解決しないだろう。
 すでに言われているように、アトピー患者は慢性的な乾燥肌に悩まされるし、がん患者は抗がん剤の副作用で皮膚がガサガサになる。病気や薬の副作用に由来する乾燥肌を、「自己責任ってことで!」とばかりに全額自己負担させるのか。

 

 私もアトピー性皮膚炎患者だ。現在は軽くなっているが、若いころはひどかった。

 アトピーはだいたい乳幼児の頃に発症し、多くは成長とともに自然治癒するが、全人口の1%くらいは大人になってもアトピーが続く。ある皮膚科医の経験によると、誰もが自然治癒するのが40代から50代以上で、つまり人によっては、40年以上医療的に保湿剤が必要になる。(竹原和彦「間違いだらけのアトピー治療」)
 保湿剤そのものはそんなに高くないが、40年以上も全額自己負担になれば、生涯医療費は相当なものだろう。
 皮膚科学会のアトピー治療ガイドラインでは、重度の乾燥はステロイド治療薬を使い、軽度の感想には保湿剤を使う、という塗り分けを推奨している。これが保湿剤だけ患者の自己負担額が増えれば、医療現場が混乱するのではないか。

 

 イギリスでは保守党のキャメロン政権が、財政赤字の削減を目的として医療の民営化などを進めたが、イギリス人の平均寿命が停滞するほど惨憺たる結果に終わった。(※医療技術が年々進歩しているので、普通平均寿命は伸び続ける。とくにイギリスのような先進国では。)このままだと、日本でもイギリスの悲劇が繰り返される。

 CNN.co.jp : 英国の平均寿命が頭打ち、統計開始後初

 
 政府(安倍政権)の緊縮と自己責任路線が、いよいよ本格化している。生活保護が引き下げになったあたりから十分臭かったが、多くの市民は「俺は生活保護を受けるほど落ちぶれないよ」といわんばかりに無関心だった。
 そして消費税が8%、10%と引き上げられ、今度は保湿剤や風邪薬、湿布薬が保険対象外になろうとしている。これはあれじゃん、ネットで有名な「ニーメラーの言葉」どおりの展開じゃん。市民が抗議の声を上げなければ、どんどん悪くなるよ。

 

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