馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

「機動戦士ガンダム」テレビ版と劇場版の一長一短。

 父が昼にテレビ放映された「機動戦士ガンダム劇場版」を見ていた。

 劇場版といっても、テレビ放映された初代ガンダムの総集編。テレビで50話足らずあり、しかも濃密な話を映画3回分に圧縮しているので、当然省略されたシーンも多い。
 一方で、テレビシリーズでの作画荒れ、使いまわし(昔の週1アニメでは仕方なかった)が若干修正されている。

 

 昔、テレビも劇場版も見たんだけど、やっぱり忘れているところ多いな。ランバ・ラルとの戦いの途中で終わりか。
 仕方ねーが、初見はここで1週間待たされて辛いだろうな。あ、ネットフリックスとかアマプラ見ればいいか。
 カットされてた名シーン。→ガルマとシャアの、「よせよ…兵が見てる」。シャワーを浴びていたり、バスローブ姿だったり、「これで勝てねば貴様は無能だ」とか。
 いや、なんでそんなとこばっかり覚えてるんだろ。

 

 しかしテレビシリーズは、今更おすすめもできない。さっきいった作画の問題、それとアホなスポンサーの意向でねじ込まれたらしい、「Gアーマー」など意味のないギミック。テレビ版と劇場版で、一長一短ある。
 今見るんだったら、安彦良和先生の漫画版「ガンダム ジ・オリジン」がいいんじゃないかな。富野由悠季監督と「解釈の違い」もあろうが。
 新たに創作されたシャア(キャスバル)の過去編だけ、「ガンダムオリジン 赤い彗星」としてアニメ化された(当たり前だけど、もう絵が全然違う)。

  

 

  おなじみ「文芸ジャンキー・パラダイス」のいちコーナー。ガンダムの入門解説として素晴らしい。

  このときギレン・ザビが35才で、山下智久くんと同い年ってマジ!?

kajipon.sakura.ne.jp

韓国・朝鮮人の元BC級戦犯という存在が語る、戦後のねじれ。

 今朝のNHKニュースで、韓国人元BC級戦犯の戦後をやっていた。
 私も昔、内海愛子氏の「戦後補償ハンドブック」で知ったけれど、彼らの扱いはいかにも日本らしい戦後処理のねじれだった。

this.kiji.is

 韓国・朝鮮人元BC級戦犯の概要は、内海愛子「キムはなぜ裁かれたか」(朝日選書)の裏表紙がいいだろう。

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 よく言われている日韓条約で日本が出した無償3億ドルの対象に、彼ら元戦犯は入っていない。
 そもそも条約の議論過程で、在日韓国人は補償対象にならなかった。二国間条約ではなく、イギリスやフランスのように元兵士に個別に支給する形をとれば、旧宗主国に在住する植民地出身者も受け取れたはずだ。(イギリスやフランスの補償自体は、褒められたものではない。)

 「条約で一気に解決」という方式は、むしろ禍根を残したのだろう…。

 
 補足。一応2000年6月に成立した法律で、元日本軍の在日外国人に対し、弔慰金等として遺族に対して260万円、生存者には合計400万円が支給された。これは一時金であり、戦後も続いた日本人への恩給に比べ、わずかな額に過ぎなかった。

 なお、ここでも元戦犯への補償はなかったようで、日本人元戦犯に対する援護と、差別的な違いがある。
 (その他にも、細かい歴史的経緯があり、長くなるので省略した。詳しくは内海愛子「キムはなぜ裁かれたか」第7~8章や、同著「戦後補償から考える日本とアジア」の「3 植民地出身者に対する差別的取り扱い」を参照してください。)

 

 

 

戦後補償から考える日本とアジア (日本史リブレット)
 

 

ドSの光浦靖子。

www.youtube.com

 関係ないけど「悪の華」アニメ版が「原作と絵柄が違いすぎる」「光浦靖子」などと大不評だったのに、その後作者の方がリアル絵路線に走ったのすこなんだ。けど、「血の轍」はもっと早く話進めてください。

 

 「惡の華」って何?というヤングに説明すると、ボードレール悪の華」を愛読する文学青年が、好きな女の子のブルマを盗んだうえ、ドSの眼鏡っ子に羞恥プレイと高笑いされて、マゾイキに目覚める話。(これでまだ序盤)

 

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「ドクター・キリコになりたい」と語っていた容疑者と、「今、漫画がものすごくやりづらい」といっていた故・手塚治虫先生。

 (※注意。関連する本をすべて処分しているので、ぼやーっとした記憶だけで書いています。間違いがあったらすいません。)

 
 ALS患者を嘱託殺人した容疑の医師は、SNSで「ドクター・キリコになりたい」と呟いていたという。名作「ブラック・ジャック」のファンなら、誰しも「読み間違えているよ!」と言いたいところだろう。
 毎日新聞夕刊の近事返々にもあったが、ドクター・キリコを「殺し屋」に変えたのは、戦場体験だった。
 従軍医として兵士の治療に当たったキリコだが、満足な医療体制が整ってない中では、重傷の患者を安楽死させるしかなかった。これはキリコが登場するたびに繰り返し語られ、ブラックジャックからは「もう聞き飽きたよ」などといわれる始末。
 メタ的には、途中から読み始めた読者にもキリコのキャラを説明するため、手塚が必要だと思ったのかもしれないが、キリコにとって深刻なトラウマだったことが分かる。まぁというわけで、初期のキリコは「戦場経験で心を病んだ医者」だった。
 さらに、ブラック・ジャックの手術によって助かった女性が、その後家族もろとも事故死したことを聞くと、高笑いしたりと、相当イヤな奴でもある。(実質初メイン回の「ふたりの黒い医者」)
 基本的に我関せずで、面倒ごとに首を突っ込まないブラック・ジャックが、キリコに対してだけは積極的に「殺すな」と突っかかるのも、人の命を救う「光」のブラック・ジャックに対して、医者の「闇」をキリコが体現しているからだ。

(後半では、「患者の命が助かるに越したことはないさ」(「死への1時間」)といったり、ちょっといい奴化したが。)

 
 手塚治虫氏は、鶴見俊輔氏との対談でこう語っていた。「今、漫画がものすごくやりづらい。というのも、主人公に対して悪役を配置すると、そっちの方がずるさとかふてぶてしさが共感を呼んで、読者の人気を得てしまう。そうなるともう、自分で何を書いているのかわからなくなる」。
 「ドクター・キリコになりたい」という医者が現れたことが、まさに手塚治虫の危惧した事態ではないか。巨匠はフィクションが持つ、底知れぬ影響力を理解していた。
 あの容疑者以外、医師で「ブラック・ジャック」を愛読している人はすべて人の命を救おうとしている…、と信じたいが。

 

ブラック・ジャック 1

ブラック・ジャック 1

 

 

「関口宏のもう一度近現代史」と「高校講座 日本史」「同 世界史」。

www.bs-tbs.co.jp

 これまでの放送内容一覧。

関口宏のもう一度!近現代史(ドキュメンタリー/教養) | ザテレビジョン(0000964425)

 

 「関口宏のもう一度近現代史」は、いいシリーズだね。

 テレビの歴史番組は、断片的なテーマと切り口が多い。NHKの「英雄たちの選択」は取り上げる時代が幅広いけど、それでも体系的ではない。そんな中、順を追って歴史を解説するこの番組は、勉強になる人が多いだろう。
 講師役は保阪正康氏。保阪氏といえば、ネットで「もう飽きたよ」という書き込みを見たし、私も本屋の新刊で保阪氏を見つけると、「また出てるよ…」と思いがちなのだが、やっぱり話はうまい。

 ベーシックな内容に加え、知ると面白い深掘り知識を語ったりして、細かくも難しくもならないバランスだ。

 
 それともう一つ、おすすめの歴史番組に、NHKの「高校講座 日本史」「同 世界史」がある。
 高校生向けと侮るなかれ。昔は先生役が黒板を背にして淡々と語るスタイルだったが、最近では若い出演者との座談スタイルに変化し、しかも民放の下手な歴史特番よりもクオリティーが高い。