馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

ギャグ路線と戦争の傷

 「ゴールデンカムイ」雑感。

 弟Aは、前に本作を漫画喫茶で一気読みしたそうだが、途中からどんどんギャグが増えていって、違和感がぬぐえなかったそうだ。初期の設定からシリアスを期待すると、ギャグに肩透かしを食らう。

 手塚治虫文化漫画賞でも、5巻までが審査対象になったと思われる2016年度と、9巻までの2017年度では、上位に食い込みながら評者の入れた得点が変わっていた。ギャグ路線をどう見るかで、評価が分かれるのかもしれない。

http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/2016result.html

http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/2017prize/comments.html#result

 (第20回手塚治虫文化賞と、第21回。中野晴行氏の4点以外、すべて違う。)

 私としては、最初見たとき「戦争の傷跡」がテーマなのではないかと思ったので、10巻の100話で「ああ、作者はテーマを見失ってなかったんだな」と安堵した。これを100話という記念になる回でやったのも、意図的なのかわからないが、構成の美しさを感じる。

 追記。

 「日本に帰ってきても、元の自分に戻れない奴は心がずっと戦場にいる」 100話のこのセリフは、鶴見中尉の「われわれの戦争はまだ終わっていない」(2巻13話)と対になっていると思われる。