馬と鹿と

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

お前はもう、崖から全力でアクセルを踏め!

jp.reuters.com

 1万8千円とかいわれてたけど、大方の安倍氏嫌いやアベノミクスアンチの想像を上回って、金突っ込んでる。

 
 今になって日銀が株にぶち込んだカネを引き上げることはできないので、こうなったらもう、庶民に金をバラ撒く大型減税、あるいは社会保険料減免しかない。

 「それがいい」というよりも、「それくらいしかない」。あたかもヒーローが断崖絶壁に追い詰められて、一か八か川に飛び込むのと一緒である。
 といっても、特撮ヒーローと日本政府が違うのは、誰かショッカーのような悪役がいたわけでもなく、日本の景気回復を「本物」にしなかった失政のツケが、ここにきて選択肢を無くしているのだ。

 

 日銀の保有している株式が赤字を記録したら、もう安倍総理と麻生副総理・財務大臣と黒田総裁は、私財を投じてでも損失を補填すべき。

 といっても、元をたどれば安倍内閣を支持してきた日本国民の読みが甘かったわけだが…。

 どうしてこんな危ない橋を渡っていたのか。今、ギリシャ財務大臣を務めたヤニス・バルファキス氏の、「専門家に経済をゆだねることは、自分にとって大切な判断をすべて他人に任せてしまうこと」という言葉が重く響く(「父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話」3ページ)。

 

 

ちょっと待った! 「韓国はPCR検査のやりすぎで医療崩壊した」論、単純すぎる。

 確かに韓国の感染死亡者数は多い。しかし、韓国の場合、カルトらしい新興宗教が感染を隠して広げたとか、特殊な事情があった。

 また、韓国の方が、日本全体よりも寒くて気候が厳しい。日本でいえば、東北・北海道くらいの寒さ。一般的に寒い方が暮らしにくく、東北地方や北海道の平均寿命は、日本の他の地域と比べて短い。

 韓国の人口は、5200万人くらいで日本の半分以下。日本より死者数の多い韓国は、人口比でいうともっと差が開く。とはいえ、人口分布も結構違う。国土の総面積は10万キロメートルで、日本(37万キロメートル)の3分の1以下ということになる。日本を超える人口密度だ。
 素人考えではあるが、人口密度が高いほど、濃厚接触で感染も広がりやすいのではないだろうか。
 日本でも、都道府県別で感染者が多いのは、北海道を除けば、東京及び周辺県や大阪など人が密集している都市部だ。(北海道については、札幌雪祭りに多くの外国人観光客が訪れたことが原因として挙げられているが、前記したように厳しい気候も関係しているかもしれない。)
 ネット右翼の「検査やりすぎ」論では、よく「イタリア、韓国」などと並べて語られている。しかし、イタリアにおける感染者数と死亡者数は、尋常ではないスピードで増えているので、韓国とイタリアはいったん切り離して考えるべきだ。「検査のやりすぎ」論は単純すぎる。

 別に韓国政府が日本政府に比して有能だとは思わないが、ネット右翼の「韓国ダメ論」に気を付けよう。
 (イタリアはよく分からない。最初に広がったロンバルディア州は、確かに人口密度が高い。が、日本ではイタリアの情報が少ないので、原因の推測もまちまちである。)

「日本新型肺炎」つっても、中国語は助詞を使わないので…。

 

 

 いやだから、それは「日本での新型(肺炎)コロナウイルスの状況は~」「イタリア国内における新型コロナウイルスの情勢は~」って言ってるだけでしょ。

 中国語は基本的に助詞を使わないので、中国語を直訳すると、「日本、新型肺炎、状況」になる。中国語をよく知らない人が字面だけ見たら、「『日本新型(肺炎)コロナウイルス』と呼んでいる」って勘違いするわけだ。

 しかし中国系らしいこの人まで、そんなこというんだ…。

 
 参考記事。中国語と日本語の違いについては、加藤徹「貝と羊の中国人」が勉強になった。

www.huffingtonpost.jp

 

貝と羊の中国人 (新潮新書)

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  • 作者:加藤 徹
  • 発売日: 2006/06/16
  • メディア: 新書
 

 

女性の就業者数が増えながら、実質GDPが横ばいであることは何を示すのか?

 安倍政権のもとで、「就業者数が増えた。雇用が改善した」と誇られてきたが、その実態は相当疑わしい。

 リベラル系の経済学者・小野善康氏は、第二次安倍政権が発足した直後の2013年以降、男性の就業者数が伸びず、もっぱら女性の就業者数だけが伸びていることに着目する。
 女性労働者が増えたことは、表面的には安倍政権の掲げる「女性が輝く社会」が実現しているように見える。だが、共働き家庭が増えれば、子供を預ける保育園の需要が増すのに、一方で賃金は上がっていない。なので、幼い子供を抱える家庭は、保育園の負担分貧しくなってしまう。
 (ちなみに、これが数だけでは保育園が増え続けているのに、「保育園不足」が起こるカラクリであろう。)

 
 安倍政権は、2017年に幼保無償化を掲げて解散総選挙を行ったが、最近の記事にあったように、消費増税2%分の半分は、国の借金返済に使われてしまった。これじゃあ幼稚園・保育園が無償化されても、子育て世帯の生活が楽になるわけがない。
 さらに、保育士が増えれば、それまで家内労働(金銭に換算されない専業主婦の家事・育児など)だった保育が、GDPに組み入れられる活動になったはず。なのに、実質GDPは横ばいになっている。
 つまり、日本経済は、保育士が増えたにもかかわらずGDPが横ばいなので、その分生産性が落ちている。(「消費低迷と日本経済」91~94ページ)え、それって経済がよくなってないよね。
 

 
 「消費低迷と日本経済」。小野氏は消費増税を支持していて、その点についてはどうもモニョるのだが、鋭い分析がいっぱい載っている。
 小野氏によれば、消費税増税分を社会保障に使えば、給与として国民の所得になったり、消費されるお金の総量は変わらないので、景気の冷え込みはない、と断言する(145~146ページ)。

 まぁ、さっきもいったようにそれが半分は借金返済に使われてたんですが…。財政再建派の執念で借金返済に回されたんだろうが、それで国民の生活が豊かになるわけではない。本当に余計なことをしてくれたもんだ。

 参考。

 

消費低迷と日本経済 (朝日新書)

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  • 作者:小野善康
  • 発売日: 2017/11/13
  • メディア: 新書
 

 

webronza.asahi.com

トランプ大統領が時計の針を戻したことで、またリーマン・ショック級の世界不況が…!?

 欧米で恐ろしいほど、新型肺炎コロナウイルスの感染が広がっている。アメリカでは西海岸から全米各地に広がり、ニューヨーク州で非常事態宣言が出された。日本は封じ込めに成功するかもしれないが、欧米は怪しい情勢。リーマン・ショック級の世界不況が懸念される。
 リーマン・ショックの時も、日本は投機マネーによる金融バブルとは直接関係なかったのに、外需・輸出が壊滅して、巻き添えで不景気になってしまった。
 アベノミクスの柱として、円安誘導して輸出を回復させるというのがあったので、日本の経済構造は海外に依存している。おととし末の米中関税摩擦でも、株価が急落した。そして今日、日経平均が2万円を割った。

 
 リーマン・ショック後は、あまりにも無責任だったマネーゲームと、大銀行への反発が世論で高まったこともあり、オバマ政権が若干の金融規制を進めた。
 ところが、景気回復のためなりふり構わないトランプ大統領は、それらの規制をすべて外し、元通りにしてしまった。これではまたリーマン・ショックのようなマネーゲームと、バブル崩壊が起こるだけではないか。
 イランとの核合意破棄や、オバマケアの破棄主張など、ことごとく「オバマ嫌い」を発揮してきたトランプ大統領だが、金融規制がまた緩んだことについては、世論の注意も緩んでいたようである。
 しかも、新型コロナウイルスによるイベント中止や、自粛ムードで、実体経済も確実に弱っているので、日本と世界経済が、リーマン・ショックの時以上に悪化する可能性もある。

「独占告白 渡辺恒雄」

www.nhk.or.jp

 父がNHKの「独占告白 渡辺恒雄」を見ていた。ナベツネ氏にライフヒストリーと、戦後政治とのかかわりを語ってもらうという趣旨。

 「NHKだし、あまり突っ込んだことを聞かないのでは?」という予想もしたが、結構話を聞きだしていて、面白かった。
 母は、「東大細胞」という用語に驚いていた。要は共産党の下部組織を指すのだけれど、私も最初聞いたときは、人体や生物でいう「細胞」がチラついて、すごい変な言葉だと思った。