馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

構成の妙。アニメ「彼方のアストラ」11話。(ネタバレ注意)

 刺客だったシャルス、本当の過去語りを始める。

 「貴族なんて檻の中の動物だ」と反発して家を飛び出したのは、「とっさの作り話」だといっている。しかし、カナタの熱い言葉にシャルスの心が揺れていたのを見れば、カナタ達との旅の中で、自由にあこがれる気持ちが刺激されたから、作り話にあんなセリフを盛り込めたのでは…、という考察がはかどる。
 カナタ達とのきずなが勝つ展開は熱いが、それ自体は王道。うならされるのは、読者の驚きが表面的で一過性に終わらない構成である。

 凡庸なストーリー漫画だと、一つのエピソードが次の話につながらないから、次になったらまた舞台説明なんかがイチから始まる。それで間延びしてイライラすんだよね。

 なぜカナタ達の帰ろうとしていた星が「地球」ではなく「アストラ」かというと、元をたどれば、人工ワームホールの存在を消し去る歴史改変があった。(なんかアニメでは省略されているが、テロや暗殺をやり放題にさせてしまった人工ワームホールは、なかったことにされて王政地区にだけ伝えられていた。次回やるかも。)

 (※追記。最終回でちゃんとやりました。なんか原作を記憶違いしているかも。)

 ポリーナが地球ではないと気付いて真っ青になってから、「謎の球体が人口ワームホールと判明する」→「カナタが刺客を見抜く」と一直線に話がつながっている。

 若い読者はカナタ達の友情に熱くなり、大人の漫画読みは見事なストーリー構成や、伏線回収に感心する。あるいは、大人も熱くなる。誰でも読める漫画に仕上がっていて、マンガ大賞受賞も納得の名作。