馬と鹿と

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

突然ツイッターアカウントが凍結される?

togetter.com

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 「死ね」「殺す」といった単語が通報されれば、脅迫としてアカウント凍結。ということは、「死ねばいいのに」といったボカロの曲も危ない?

 私は「冗談でも「死ね」と言ってはいけない」という意見を支持するので、「死ねばいいのに」というタイトルは好ましくない。しかし今のままでは、凍結の基準が不透明で理不尽だ。

ダーバン会議以外の、欧米の植民地支配と人種差別の歴史に対する意識。

inunohibi.hatenablog.com

 猫アイコンの人。中途半端な知識で欧米のことを並び立てれば「いいね!」が付くんだから、ぬるま湯な空間だこと・・・。

 ただ、一度熱くなると、はまりすぎて突っ張るのは、いつも私の悪い癖。そこまでむきになるべきではない論点や、局面でも。

 「「主権は絶対だ」とイギリス人は考えるが、そうならインドや中国の主権も絶対である。(・・・)「不幸にして過去にそのような帝国主義的行為があった。したがって現在のイギリス人は、インドや中国の繁栄と幸福に責任を持たねばらならない」というのが、現在のイギリス人の少なくとも公式上の弁明である」(森嶋通夫「思想としての近代経済学」 192ページ)

 故・森嶋氏はロンドン大学の名誉教授なので、実際の見聞も入っていると思う。

 そもそも、猫アイコンの人の議論の発端は、「大正末期の倫理観を現在に持ってきてポリコレ棒を振り回してる」だった。ダーバン会議の宣言文はどうか。まさに現在の価値観で昔のことを問題にしていた。

 前記2書によると、現在、欧米が発展途上国の人権状況を厳しく非難しているから、その由来となった植民地主義の非を、アフリカやカリブ海諸国の要求で盛り込まざるを得なかった、というのが実情のようだ。

 他に、「反省してる文章でも追悼文でも毎年やってるのか?その実例を教えてくれ。」といっていた。

 アメリカの知日派として知られるアーミテージ氏は、日本人との議論の場で、「アメリカは奴隷制、人種差別の歴史を謝罪し続けている」から、日本も「慰安婦」の謝罪はもう終わった、と言えない、という旨の発言をしたらしい。

 新聞記事だから、ソースはどこにあったのか忘れたが、あっちがソースゼロでぺちゃくちゃしゃべっているんだから、これくらいいいだろう。

 これらをさらに出しても、猫アイコンの人は納得して矛を収めることはないだろう。よって、返信としてまとめに書くことはしない。小池都知事の追悼文云々とは別に、欧米の取り組みが不十分であることは、私も否定しない。過去に何度か、欧米リベラルのダブルスタンダードや限界を指摘したこともある。

資料。2001年、ダーバン会議。

https://www.hurights.or.jp/archives/durban2001/durban.html

 2001年、南アフリカで開催された、いわゆるダーバン会議の宣言文。

「14 植民地主義が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらし、アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族植民地主義の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けていることを認める。植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する。この制度と慣行の影響と存続が、今日の世界各地における社会的経済的不平等を続けさせる要因であることは遺憾である。」

「99 奴隷制、奴隷取引、大西洋越え奴隷取引、アパルトヘイト植民地主義およびジェノサイドがもたらした大規模な人間の苦痛と無数の男性、女性および子どもたちの苦境を認め、深く残念に思い、過去の悲劇の犠牲者の記憶に敬意を捧げ、それらがいつどこで起きたものであれ、それらが非難されねばならず、再発が予防されねばならないことを確認するよう関連する各国に呼びかける。これらの慣行や組織が、政治的、社会経済的、文化的に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらしてきたことを残念に思う。」

 今、本が手元にないけれど、高橋哲哉編「歴史認識論争」や、中野敏男、金富子編「歴史と責任」によると、植民地支配を行った西欧諸国のほとんどが参加している。

 欧米諸国の「謝罪」はなくとも、こういったことはすでに言われている。

サルトル

f:id:inunohibi:20170824224018j:plain

 引用。

「ファノンが指摘していることだが、少し前まで精神科医たちは学会で、原住民の犯罪性に頭を悩ませていた。この連中は殺し合いをする、と彼らは言うのだった。これは正常なことではない。アルジェリア人の大脳皮質は発達が遅れているに違いない。中央アフリカでは他の精神科医が「アフリカ人はほとんど前頭葉を使っていない」ことを明らかにしている。今日これらの学者がヨーロッパで、特にフランス人について調査を行ったならば面白かろうに、なぜならば、われわれも数年来、前頭葉の機能低下に見舞われているに相違ないからである」

 (ジャン=ポール・サルトルの序文。「地に呪われたる者」30ページ)

 

印籠を期待する日本人?

ch.nicovideo.jp

 ところで、ひさしぶりに大口歩也氏のブロマガの記事を見たが、

「要するに、どちらが悪いかといえばどちらも問題があったとしか客観的には評価できないわけですが、現在の韓国ではこの武装して立てこもった学生らの行動が美化され、逆に斗煥元大統領が完全に悪役となっているのです」

 という単純にして平板極まる評価に、「俺の言ったことを再確認させてくれるとは」と思った。なるほど、北朝鮮金王朝が今も安泰なのは、平和的で従順な、「問題ない」国民で構成されているからだ、と分かった。

 笑い事ではなく、意外と根の深いメンタリティーかもしれない。何しろ日本では、歴史上最大規模の対外戦争になった先の大戦でも、昭和天皇の「聖断」で決着した歴史を持つ。

 自分の力で何とかするのではない、「平和的にやる」という名で耐え忍び、水戸黄門が印籠を出して解決してくれるのを待つ・・・、というのが日本人かもしれない。