馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

登場人物雑感、その2。

 杉元佐一

 重い過去を背負った主人公。・・・のはずなんだけど、アシリパに目玉や脳みそを勧められたときは、リアクション芸人になる。「ヤダカワイイ」とか、ときどきキャラが壊れる。アシリパたちとのふれあいで、豊かな感情を取り戻している・・・、のか? (作者が杉元で遊んでいるだけっぽい)

 アシリパ

 顔芸ヒロイン。しかし最近は、白石のほうがハジケているので、顔芸キャラの王座が脅かされている。

 土方歳三

 五稜郭の戦いで遺体が確認されることのなかった土方(平野耕太ドリフターズ」知識)は、「実は生きていた」という設定がやりやすいんだろう。土方は新選組の組織統率者であり、剣は強くなかったという説もあるが、私の知っている新選組の出てくる漫画・ドラマに、その設定はなし(詳しくないんで、あったら教えてください)。刃牙の全選手入場風に言うと、「特に理由はない! 土方歳三が強いのは当たり前!」ということだね。

 追加。表紙登場以外の人。

 インカラマッ

 これからも重要人物っぽいが、杉元にループしたので、表紙登場はもうないかもしれない。「傷のある男性にとても弱い」というのはちょっとわかるけど、杉元から鶴見中尉というのは守備範囲が広いねぇ。

 辺見和雄

 アニメ化したら、真っ先に自主規制されそうなやつ。家永と江渡貝も・・・。規制対象が多くて、アニメ化したら失敗しそう。(同じヤンジャンのキングダムも・・・ゴニョゴニョ)

「ゴールデンカムイ」の登場人物、雑感。

 鶴見中尉

 ネタバレ、中尉の構想する北海道独立国は実現しない。

 ・・・普通に考えれば、金塊が手に入らないか、クーデターが失敗して、鶴見中尉の計画は挫折するはずだ。インタビューによると、野田氏はあくまで史実を曲げない範囲で描くスタイル。

 とはいえ、ゴールデンカムイにおいては何が起こるかわからない。もしかしたら、そういう平凡な予想を裏切ってくるかも。

 白石由竹

 モンキー乗りを先取りしたり、キャットウォークを先取りするゴールデンカムイの登場人物。こいつは紙幣に火をつけて明かりにする、第一次世界大戦時の成金を先取り。

 尾形百之助

 再登場してからはニヒルな伊達男になり、ガラッと印象が変わった。初登場の時と再登場以降、顔が違う。ちがくない? 顔のケガは縫ったみたいだし、入院中に整形したのかも。

 谷垣源次郎

 二瓶鉄造から、猟師の魂と「勃起」の決め台詞を受け継ぐ(そっちは継いじゃらめぇ~~)。

 牛山辰馬

 定期的に女を抱かないと、精神不安定になる。師匠のカミさんを寝どり、怒った師匠を殺してしまった。よく「それ以外はいい人」とか、「それ以外は普通の人」と紹介されているが、いや、「あの人はお酒を飲まないといい人なの」と一緒で、これ十分にダメ人間だから。キャラの濃すぎるゴールデンカムイ世界に毒されてはいけない。

 キロランケ

 杉元の仲間だが、謎の多い人物。とはいえ、猟奇殺人者・家永カノもいつの間にか土方一行になじんでいるし、こいつの怪しさとか、もう誰も気にしていない。

 

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 戦争成金を描いた風刺画。(アンドルー・ゴードン「日本の200年」297ページから)

ギャグ路線と戦争の傷

 「ゴールデンカムイ」雑感。

 弟Aは、前に本作を漫画喫茶で一気読みしたそうだが、途中からどんどんギャグが増えていって、違和感がぬぐえなかったそうだ。初期の設定からシリアスを期待すると、ギャグに肩透かしを食らう。

 手塚治虫文化漫画賞でも、5巻までが審査対象になったと思われる2016年度と、9巻までの2017年度では、上位に食い込みながら評者の入れた得点が変わっていた。ギャグ路線をどう見るかで、評価が分かれるのかもしれない。

http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/2016result.html

http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/2017prize/comments.html#result

 (第20回手塚治虫文化賞と、第21回。中野晴行氏の4点以外、すべて違う。)

 私としては、最初見たとき「戦争の傷跡」がテーマなのではないかと思ったので、10巻の100話で「ああ、作者はテーマを見失ってなかったんだな」と安堵した。これを100話という記念になる回でやったのも、意図的なのかわからないが、構成の美しさを感じる。

 追記。

 「日本に帰ってきても、元の自分に戻れない奴は心がずっと戦場にいる」 100話のこのセリフは、鶴見中尉の「われわれの戦争はまだ終わっていない」(2巻13話)と対になっていると思われる。

狂気に呑まれない語り口。野田サトル「ゴールデンカムイ」10巻まで読んだ。

 巻が進むにつれ、出てくる変人・変態がますます激しくなる。江渡貝弥作はさすがに引いた。けど、この漫画のいいところは、狂気に走ってもちゃんと本筋のストーリーを進めるところ。

 ときどき物心両面でグロテスクな描写が話題になる作品はあるけど、それはたいてい奇抜さが目を引くだけで、ストーリーはあってないようなものだから、面白くない。

 ソースがニコニコ大百科程度だけど…、この前「なるたる」を書いていた時の鬼頭莫宏氏が、精神病だったらしいことを知った。あれはストーリーが破たんしていたから、「病気でした」といわれれば、さもありなんというところ。

 野田サトル氏の頭の中は、どうなっているんでしょうか。作者こそが、狂気と頭のキレを併せ持った鶴見中尉かな?

 戦争などで心に傷を負ったおじさんを、純真な少女が癒す・・・、といってしまえばベタな構図だけど、ヒロイン・アシリパのたくましさで、甘ったるい空気にならないのがいい。

野田サトル「ゴールデンカムイ」 7巻を読む。

 巻が進むにつれ、何でもありになってきた。競馬場。馬券が当たって調子に乗る白石。杉元の仲間・キロランケが、成り行きでジョッキーになる(成り行きでやることか?)。ここまで何でもありだと、いっそすがすがしい。

 白石の変顔が面白すぎる。変顔のレパートリーが天才的。1巻の時に、「絵は別にうまくない」といってしまったが、格闘シーンは迫力あるし、動物のち密な書き込み、豊かな表情(かわいい仕草も、見てきたようにリアル)も素晴らしい。美男美女の立ち絵が、相対的に平凡か。

 コメディリリーフ白石も、脱出術に関しては常人離れしているのだが、登場人物がどいつもこいつも常人離れしているので、相対的に「役立たず」扱い。競馬で金はすったが、杉元から「必要な額の金が手に入ったからって、「一抜けた」なんて、そんなこと・・・」というかっこいいセリフを引き出す。おいしいキャラだ。

野田サトル「ゴールデンカムイ」 6巻まで読んだ。

 主人公の杉元は、ヒロイン・アシリパを危険から守るナイト的ポジションでもあるが、アイヌのおばあちゃんが「嫁にもらってくれ」といって、アシリパがまんざらでもない表情だったくらいで、恋愛フラグは立たず。まぁ杉元には、すでに想い人がいるしな。
 連続殺人鬼とか、外見は美しい女性だけど、実は・・・、という殺人鬼とか、話が奇人変人と珍道中というテイストになってきた。けど、ま、一番の変人は鶴見中尉。
 鶴見は狂人っぽいのだが、頭を怪我して「カッとなりやすくなった」というのも本人が言ってるだけだし、ときどきキレるのも、敵や裏切り者を怖がらせるための演技かもしれない。底の見えない人物である。