馬と鹿と

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

面白いというより、うらやましい。「君の名は。」

 家族が借りてきた「君の名は。」DVD。視聴前は、いかにも若者向け青春アニメのこれを、年長の両親が楽しめるのかい、と思ったが・・・。母に「ラ・ラ・ランド」とどっちが面白かった? と聞いたら、「君の名は。」という回答だった。

 日本ではこけたっぽい「ラ・ラ・ランド」。かたや大ヒットした「君の名は。」 男女の精神入れ替わりというのはよくある設定だが、たいていの先行作品は身近な知り合い(クラスメイト、親子)が入れ替わり、小規模な日常世界で完結していた。

 これは遠くの見知らぬ男女が入れ替わることによって、互いに気になり始め、男のほうが会ってみようと訪れるが…、というところからまた話が二転三転する。

 プロモーションで印象的な、きれいな巫女さん姿も、画面を華やかにするための飾りではなく、ちゃんと意味があった。ついでにヒットして、そこらじゅうで流れまくっていた「前前前世」の曲も、単なるタイアップではなく、ちゃんと意味があった。そこに大きな意外性はないが、ゴテゴテとした無駄はなく、すっきりした後味。

 純粋に楽しむよりは、「こんな出来のいい話が作れてうらやましいなぁ」という羨望のまなざしになった。いやさ、私も青春小説もどきを書いて、しかもちっとも話題にならないから・・・、売れるというのがうらめし・・・、いや、うらやましくて仕方ない。