馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

ファインモーションの母国と、バイアリータークとの間に悲しき歴史…、いや、そんなものは存在しなかった。

 【新キャラ登場】

 史実のバイアリータークが軍馬だった(のちに種牡馬に転用され、サラブレッドの「三大始祖」になる)ということで、ウマ娘のAIバイタクは軍人キャラですね。

 エピソードもかっこいいよね、ボイン川の戦いで敵軍に包囲されてしまった中、持ち前の速さで突破して切り抜けたり…、ん、おい待てよ、ボイン川の戦いって、 アイルランドでやってた戦争じゃねえか!

 

 なるたけかみ砕いて説明すると、17世紀のイギリスでは、カトリックを信仰するジェームズ2世国王が、カトリック寄りの政治を行ったため、危機感を抱いた国内の新教徒(プロテスタントのこと)が革命起こして、ジェームズ2世が失脚、フランスに亡命しちゃった。
 新しい国王には、新教徒たちの推戴で、プロテスタントのオレンジ公ウィリアム(ウィリアム3世)が就任。しかし、ジェームズ2世は「まだだ! まだ終わらんよ!」とばかりに、アイルランドカトリック勢力や、カトリック国・フランスの支援を取り付けて、復権を画策。
 けれども、ウィリアム3世は、アイルランドに軍隊を派遣して、ジェームズ2世に呼応して蜂起したカトリックの反乱を鎮圧した。アイルランド人の奮闘むなしく…。

 ウィリアムVSジェームズの戦いの一つが、ボイン川の戦いで、バイアリー大佐もウィリアム国王側で参加していた。バイアリーはこの一連の戦いで、「輝かしい武勲を立てた」とされている。
 17世紀のヨーロッパといえば、30年戦争など、悲惨な宗教戦争があった最後の時代というイメージがある。有名な史劇「三銃士」の舞台になった時代でもあり、カトリックプロテスタントの宗教対立に加え、宰相リシュリューが謀ったような国家間の権力争いも絡み、複雑に戦争が繰り返されたんだワ。

 ダメだ、全然短くならなかった。

 

 しかし、(また)待てよ…、ウマ娘世界では、アイルランド出身のファインモーションが「殿下」と呼ばれる王族で、どういう世界線なのか知らないが、アイルランドに王室が残っているぞ。(ファインモーションが実装された時、一部のオタクがそこを議論していたような記憶)
 ウマ娘世界の歴史では、アイルランドが征服されなかった?

 まぁとりあえず、「良かった…、カトリック弾圧に加担することになった軍人ウマ娘バイアリーターク はいなかったんだね…」と勝手に納得しておく。

由来

 ※名前の由来は、イギリス人ロバート・バイアリーが所有するトルコ種の馬だったから(アラブ種という説も有力)。タークとは、トルコ種、トルコ産という意味。まんまですね。
 どうもこの時代は、まだ馬に固有の名前を付ける文化がなかったようで、トーマス・ダーレーが所有していたアラブ馬だからダーレー・アラビアン、最終的な馬主がゴドルフィン伯爵だったからゴドルフィン・アラビアンと、シンプルそのもの。

 ウマ娘や、ウマ娘とコラボ中の「スターホース」(SEGA)では、「ゴドルフィンバルブ」という名前になっている。
 これは、同馬が北アフリカ経由でフランス国王ルイ15世に献上されたため、北アフリカに多いバルブ種だろうと思った人がいたから(「世界名馬ファイル」の13ページ)。
 つまり、すでに否定された「勘違い」由来の名前なんだけど、まぁウマ娘なんてフィクション極まった世界観で、バルブだろうがアラブだろうがどうでもいい気はする。(スターホースのことはよく知りません…)

参考文献