馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

「血」は絶えても、「人」が残る。史上二頭目の三冠牝馬・スティルインラブの遺産だと思うこと。

 今日土曜は、府中牝馬ステークス、明日は秋華賞だ。

jra.jp

 スターズオンアースに牝馬三冠の期待がかかるということで、カンテレでは、過去の牝馬三冠(達成時)の動画がUPされている。その中に、二代目三冠牝馬スティルインラブの動画もある。

youtu.be

 (カンテレさんの動画には、勝利騎手インタビューが入っているので、若い頃の幸英明騎手も見れるよ!)

 

 スティルインラブという馬は、ちょっと語りにくい(※個人の感想です)。
 3歳時、アドマイヤグルーヴとの度重なる対決は、競馬史に残る名勝負だったと思うのだけれど、その場合アドマイヤグルーヴ視点になり、むしろスティルインラブが物語のわき役になってしまう。

 牝馬三冠レースすべて、アドマイヤグルーヴが1番人気で、ラブは2番人気で三冠に輝いた。やっと1番人気になれたエリザベス女王杯では、むしろアドマイヤグルーヴの執念が勝ち、グルーヴ陣営念願の初タイトルとなった。

 まるで、サンデーサイレンスVSイージーゴーアのようだ、とつぶやくファンもいる(この名馬対決も、すべて人気が下回った方の勝ちに)。
 これでは、アドマイヤグルーヴの方が漫画か何かの主人公っぽい。いや「すべての馬にドラマがあり、すべての馬が主人公」という観点に立てば、スティルインラブとダブル主人公だ。(ちなみに、ラブとグルーヴ、どちらも父・SS)

 

 ただ、スティルインラブは、エリザベス女王杯2着を最後に、何かがぷつっと切れたのか、その後は大した成績を残せず引退している。
 引退後の経歴も対照的で、アドマイヤグルーヴが繁殖生活の最後に、ドゥラメンテ(父はキングカメハメハ)という傑作を生み、ドゥラメンテからは、タイトルホルダーといった仔たちが今のレースシーンをにぎわしている。

 牝馬三冠に王手をかけているスターズオンアースも、父・ドゥラメンテである。

db.netkeiba.com

 一方、スティルインラブは、牡馬を一頭生んだ後に急死してしまい、その牡馬も、成績がさえなかったため種牡馬になれず、スティルインラブの血は途絶えた。

ja.wikipedia.org

 オカルトなイメージになるけれど、スティルインラブエリザベス女王杯に負けた時点で、残ったエネルギーをアドマイヤグルーヴに吸われたかに見えた。


 しかし私は、スティルインラブが「血」とは別に、「人」を残したと思っている。アドマイヤグルーヴの主戦・武豊騎手は、グルーヴに乗る前からトップジョッキーだった。が、ラブの主戦・幸英明騎手はそうではない。
 幸騎手は、ラブの桜花賞が、デビュー10年目で初のG1勝利。移り変わりの激しい競馬界。それまでも幸騎手は勝利数を積み上げていたが、ここでビッグタイトルを手にしたことは大きい。
 この時代、若手・中堅は誰もかれも騎乗馬の確保に苦労していたから、幸騎手もこれで一気にスターダムに…、とはいかなかった。
 それでも幸騎手はくさることなく、コツコツとローカル及び地方で、たくさんの騎乗依頼をこなしていった。

 その過程で、ブルーコンコルドや、ホッコータルマエといった、ダート名馬の主戦としても活躍している。
 特にホッコータルマエは、ウマ娘化で再び熱い注目を浴びたと思うが、コパノリッキーエスポワールシチーといった、名馬ひしめくダートのハイパー戦国時代に、G1およびJpn1を合わせて10勝したのだから、大したもの。(「Jpn1」とは、国際G1ではない国内G1のことで、「G1級」という呼ばれ方もする)

https://jra-van.jp/fun/memorial/2009100921.html

  

 去年は、アカイイトエリザベス女王杯を勝った幸騎手。
 今日のアイルランドトロフィー府中牝馬ステークスに、アカイイトが出ている。近走の成績を見ると、一線級が相手だと苦しい馬かなぁ、と思うが、今回は牝馬限定のG2なので、再浮上する可能性がある。

jra.jp

レース結果

 勝ったのは、12番人気・イズジョーノキセキ。うーむ、アカイイトは10着かぁ…。

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