サッカーボーイといえば、荒い気性と蹄の弱さという、二つの難点があった。しかしこのうち、荒っぽさは度胸の強さでもあり、育成と調教でサッカーボーイを預かった大沢俊一氏は、「ユニークな馬だよ。ほかの馬がビビることを、平気な顔をして見てるんだ」と語っている(吉川良「人生をくれた名馬たち 1」)。
栃栗毛の明るい馬体に、勝つときは強烈なスピードで圧勝するのだから、ファンの人気も絶大だった。弥生賞で3着、NHK杯で4着に負けたはずなのに、ダービーでは1番人気にされていた。
時代はオグリキャップ登場で、空前の競馬ブームを迎えるころ。危ないスターホースというのを知らない若いファンが、サッカーボーイに金を突っ込んでいたのかもしれない。
さまざまな冠名
サッカボーイについて、これ以外にはネットで書かれていることしか知らないので、馬名についての感想を記してみる。
「サクラ」や「ナリタ」といった冠名は、「あぁあの馬主ね」と分かりやすいし、父か母の名前を取ることによって、血統も分かりやすい。
「タマモクロス」「ナリタブライアン」らは、それぞれ冠名に父親の名前を合わせたもので、ひねりもなんもないが、最近の「なになに語でホニャララという意味です」なんつー覚えにくい馬名に疲れてくると、あれはあれで懐かしい。
天下の社台グループも、昔は「シャダイ」という冠名を使っていて、「アンバーシャダイ」(ノーザンテースト産駒、有馬記念と天皇賞・春を優勝)や「リアルシャダイ」(社台が外国で購入し、外国で走らせてから日本で種牡馬入りした馬。主な産駒にライスシャワー)がいたけれど、いつの間にか使わなくなった。
社台には「ダイナ」という冠名もあり、これは日本ダイナース社と共同で始めた一口馬主のクラブ法人、社台レースホースの馬に付けられた。これもそのうちなくなった。
その社台レースホースの馬・サッカーボーイは、父がフランスのマイルG1を勝ったディクタスで、母がダイナサッシュ、母の父がノーザンテーストという血統。ディクタスは、社台が期待して輸入した種牡馬であり、母は先述の「ダイナ」、母の父は社台ファームを大きく躍進させた名種牡馬である。
というわけで、サッカーボーイという名前の由来は何なのか、ちょっと気になったけれど、持っている本だけでは分からなかった。まぁ、分からなくともこの馬のさっそうとしたイメージに合っているいい名前。
「ボーイ」なら、競馬ファンはトウショウボーイも思い浮かべるだろう。これは父・テスコボーイ(海外から輸入された種牡馬)から来ている。(ちなみに、全くの偶然だろうが、先述の大沢俊一氏はトウショウ牧場に勤めていた時期があり、デビュー前のトウショウボーイを世話したことがある)
引退後のサッカーボーイは、内国産種牡馬がサンデーサイレンスやトニービンに押されて苦戦していた時代に、よく健闘した。同期の中でも、オグリキャップやヤエノムテキやスーパークリークといった名馬が不振にあえぐ中、数少ない勝ち組だった。
しかし、代表産駒のナリタトップロードは、父親に似ず優しい性格で、レースでの決定力や支配力に乏しい走りが父と全然違った。
「ナリタ」の馬は、何か泥くささがあり、時に凡走するが、いつも一生懸命なイメージがある。名は体を表すのだ。