馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

問題はいつだって重層的なもの。(「騒ぐほどではない」という森喜朗発言への反応をめぐり~)

 先日の森喜朗会長の発言問題で、「騒ぐほどのことか」という反応も散見される。あまりにも事態の深刻さを、わかってないとしか言えない。

 森会長の差別的発言単体でどうこうではない、あれは最後のダメ押し。
 新型コロナで社会全体が不安に陥り、非正規を中心に失業者が増え、オリンピックの開催が不安視や疑問視された末での、あの発言だった。
 その時々の暴言・放言の程度に応じて、「的確に怒る」というだけなら、そりゃAIと同じだろう。そうではなくて、リアルな心の動きとしては、今まで我慢してきたことが耐えきれなくなって、わっと不満が噴出する…ということもある。

 

 昨年好評を博した刑事ドラマ「MIU404」では、悲惨な境遇にある女性が、テレビで疑惑の政治家がろくな追及もなく終わっているのを見て、うんざりしているシーンが出てくる。

 政治家の疑惑ニュースとは、モリカケ桜を意識した社会風刺に見えるが、ここで重要なのは、汚職の深刻度合いではなく、女性が自身の境遇とのギャップに感じた絶望感、閉塞感である。
 女性、若者を中心に、庶民の雇用が全然守られていないのに、森会長の社会的地位は「余人をもって代えがたい」(by自民党世耕弘成)と守られている今の日本は、公平な社会なのか。

 

news.tbs.co.jp

 近年では「ジョーカー」など、格差や貧困、社会的孤立を描いた映画が高い評価を得ているが、「万引き家族」に対して「日本を貶めている」とか、「パラサイト 半地下の家族」に対して「韓国はひどいところなんだな~」と超的外れな感想を書くやつがいる。まぁそういう人が今も自民党を支持しているんですかね。

 

 あるいは、東京五輪のボランティアに対して、辞退を申し出る電話も相次いでいるという。

 ぶっちゃけ、五輪に何も貢献する気がない傍観者100人が「騒ぐほどではない」というよりも、五輪運営がアテにしていたボランティアが、一人でも辞退する方がダメージだろう。
 JOCの関係者や自民党は、しがらみで森に対して強く言えないでいる。その点ボランティアは、地位がかかっているわけでもなく、善意100%でやるしかないので、正直な行動に出るのだろう。

 金で雇っていれば、また違ったかもしれない。私のようなニヒルな左翼からすれば、IOCJOC役員が高給もらっているのに給料の出ないボランティアなんて馬鹿らしくてやる気がしないのだが、それに応募するということは、お人好しなくらい性格がいいのだろう。

 そういう人であればこそ、コロナと森発言で世間の平均よりナーバスになるのだ。

 
 かくいう私も、仕事がない。ライターの仕事を探していたが、もともと割のいいまともな仕事がなかったところに、コロナで全く仕事がなくなった。
 菅総理は「自助・共助・公助」といった。なるほど、自民党の連中は、まず仲間内で助け合っている。無能にしか見えない政治家を「実は優秀な人なんです」という褒めあいの儀式によって、延命させている。

 「実はいい人」「実は優秀」ってパターン、もう飽きないか? 俺は飽きた。鬼滅の刃とか、呪術カイセンとか、漫画の世界だけにしてくれ。

 

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