馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

菅内閣に対して、政策転換を求めている国民。そして、「医療崩壊」は、ずいぶん前から警告されていた。

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 共同通信世論調査では、支持率が先月から13%下落したが、左派からは「まだ50%」という感想も。
 しかし、菅内閣の唱える「感染対策と経済の両立」が、まず感染の広がりで破綻し、「どちらかといえば」も含め、感染対策「優先」が7割強になったので、国民は政策転換を求めている。

 
 北海道や大阪では、医療崩壊が始まっている。
 医療従事者というのは、金を出せばすぐに増やせるものではない。高度な専門知識を必要とする職業なので、教育や研修を何年間も受けなければいけない。

 (GOTO擁護派が、「なら病院で失業者を収容しろ!」といっているのを、みたことがある。苦し紛れの極論だが、確かにできなくもない。だが、他業種の失業者が、今すぐ医療従事者の手伝いはできない。)
 要するに政府や地方自治体は、政策の優先順位をミスっていた。しかし、医療関係者の話によれば、すでに春の第一波の時点で、現場は危機的状況に陥っていた。
 元をただせば、人材を取り換えの利くパーツのように見なし、医療従事者がつぶれても放置してきた、新自由主義的な医療経済観のツケだと思う。

 
 実は「医療崩壊(~の瀬戸際)」と呼ばれる事態は、すでに警告されていた。
 たとえば、当時虎の門病院泌尿器科部長の小松秀樹氏による「医療崩壊」(2006年)。そこでは、政府が「医療費抑制」を目指しながら、「安全性の向上」も目指す
(こちらは一般市民である患者も強く支持している)ため、相互に矛盾する圧力の中で、労働環境が悪化し、医師が現場を離れ始めた、という。
 医師の数自体が減っているわけではなく、開業医は増えている。ところが、リスクの高い検査や手術を行う大病院は、空洞化しはじめているという。(ボリュームのある本なので、それ以外にも様々な興味深い分析や提言、医療に対する哲学が披露されているが、ここでは割愛)
 その14年前から指摘されていた現場の危機が、新型コロナという、対応に手間暇かかる感染症で露呈した。

 兵士が「赤紙一枚」で補充できると思っていた「失敗の本質」の時代から、日本は変わってないのかもしれない…。