馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

大河ドラマ「麒麟がくる」の感想。信長と足利義輝・義昭、ちょっと史実解説。

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 昨日は、第24回「将軍の器」。第13代将軍・義輝の死亡回だった。
 歴史物というのは、大まかな事実を視聴者も分かっているからこそ、伝えられることがある。義輝の場合、幕府と将軍家再興のため努力しながら、結局殺されてしまうという悲劇性があり、「麒麟が来る」作中の言動もそこへ向けて練られていた。
 (それにしても、よりによって新型コロナと台風・大雨で繰り返し延期になり、作品まで悲劇性を帯びなくていいのに…。)
 今作の義輝は、向井理くんのイケメン補正によって儚さが増している。そういえば松永久秀も、「(値打ちはなくとも)美しいものは美しい」とつぶやいていたような…。(「おっさんずラブ」戦国バージョンか?)

 
 歴史的には、時の将軍殺害という重大事件だが、いかんせん信長、秀吉といった大河ドラマの主役になるようなキャラと関係してない事件なので、これまで丁寧に描けなかった。
 一応、尾張統一後の信長が、尾張守護代としての地位を保証してもらうため、京の義輝に謁見したという史実がある(「信長協奏曲」にも書かれたエピソード。こっちの信長くんは物見遊山だったが)。
 が、後の足利義昭を擁した上洛が、「名目に過ぎない」「信長の眼中に室町幕府はなく、義昭も傀儡だった」という従来の理解にとどまると、義輝をクローズアップする意味がない。
 しかし、近年の研究によると、義昭は将軍権力を確立するため精力的に政にかかわっていたらしく、お飾りではなかったようだ。(気軽に読めるものとして、藤田達生「天下統一」中公新書、同著「織田信長」日本史リブレット人)
 というわけで、これから足利義昭がどう描かれるか気になる。すでにもう、単なる無能ではないキャラ付けが…。

 

 

 

織田信長: 近代の胎動 (日本史リブレット人 45)

織田信長: 近代の胎動 (日本史リブレット人 45)

  • 作者:藤田 達生
  • 発売日: 2018/03/29
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

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 義輝ロスのさびしい気持ちをほんわかさせる「太閤立志伝」。(本編は至極まっとうな、硬派歴史ゲームです。)

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 ”9代義尚から15代義昭までの「戦国時代の足利将軍」をテーマに、各将軍とその時代について、専門研究者がわかりやすく解説。(~)応仁の乱以降、ほんとうに将軍は没落したのか?信長の登場で、室町幕府は終わったのか?”

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