馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

731部隊の人体実験(生体実験)は、左翼が言ってるだけの歴史事実じゃない。付録を追加。画像を追加。

hokke-ookami.hatenablog.com

 「僕のヒーローアカデミア」の件で、改めてねつ造論が流布している731部隊の人体実験(生体実験)。

 これらについては、2017年にも色々記事を書いた。いずれ詳しく勉強しようと思っていながら、全くしていなかったが、大まかな結論は変わりようがない。

 日本史の教科書に、「生体実験が行われた」ってある。左翼が言ってるだけの歴史事実じゃない。
 再掲。”私なりの考えでは、歴史教科書には検定というものがあるから、歴史学者の事実認定だけではなく、文部科学省のお墨付きもある。複数の専門家や組織が「確からしい」と認めたことを学ぶのは、それなりに意義があるだろう。”

「歴史教科書なんて、定説がコロコロ変わるのに意味あるの?」 - 犬沼トラノオ日記

 
 1980年代に、教科書の南京事件731部隊の記述を、文部省(現在は文科省)が「本当にあったかどうかわからない」と検定で削除させた。で、それを歴史学者家永三郎氏が裁判に訴えた。判決は文部省の敗北で終わり、教科書に南京事件731部隊が載るようになった…、という「歴史論争の歴史」がある。
 教科書裁判以来、文科省が必死になって削除したがる記述が、ネットのまとめをちょっと読んだ程度で「はい、論破」出来るわけがない。左翼はよく「歴史学を舐めるな」というけれど、文科省も舐めてはいけない。

 (今回の件では、「日本の加害の歴史を知らないとは」という嘆きの声もあったが、さすがにないものねだりでは。731部隊なら一般教養だとしても、被験者が「マルタ」と呼ばれていたという隠語については、細かい知識の範囲だろう。今回の件では速やかに編集部と作者がお詫びして、生体実験のことをはっきり史実と認識しているから、それでいいはずだ。)

 

 余談と補足。故・家永三郎氏の戦争犯罪研究は、この分野のパイオニアであり、貴重な業績とされているが、現在からみれば(当然)欠陥もある。著書「戦争責任」では、「慰安婦」の強制連行について、吉田清治氏の証言を長々と引用していた。
 よく知られていることだが、今はもう吉田証言は否定されている。それらを受けて、保守的な第一次安倍政権では、「強制連行はなかった」という閣議決定が行われた。
 私が生体実験の根拠として挙げた山川出版社の「詳説日本史B」でも、「慰安婦」への言及はあるものの、「強制連行」の記述はない。
 吉見義明氏、林博史氏ら左派の研究者を中心に、反論や異論も根強く存在する。まぁそれらは実際に本を読み比べて判断してほしい。

 

(私が持っているのは、2007年の版。)

詳説日本史B 改訂版 [日B309] 文部科学省検定済教科書 【81山川/日B309】
 

  付録。日本の教科書検定制度について、政府・外務省の公式説明(平成17年6月付け)。

 

www.mofa.go.jp

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 山川出版社「詳説日本史B」、731部隊の記述。再アップ。
 2年半前はスキャナーしかなかったので、ページの内側が読み取れなかった。今度は弟Bのスマホカメラで撮る。ブレてしまったが、一応読める。