馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

変わる一進会の位置づけ、金玉均の位置づけ。

 

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文芸ジャンキー・パラダイス

 “今年鑑賞した映画の第2位はDVDで観た2012年の日本映画『道~白磁の人』(監督高橋伴明・主演吉沢悠)です!100点満点中で1億点という久々の銀河点を叩き出した作品。邦画ですが舞台は日本統治時代の韓国。この映画を見た人と見ていない人では、韓国という国に対する印象が大きく異なると思う。”

 「文芸ジャンキー・パラダイス」12月24日の日記で紹介されている、日本映画『道~白磁の人』(監督高橋伴明・主演吉沢悠)。実際面白いかどうかは置いといて(オイ)、志が高いようだ。
 (カジポンさんは、「面白い」の範囲が広いのか、私にとってつまらなかった映画でも結構評価されていたりする。)

 

 “「併合は韓国側が望んだもの」という言葉もネットにあふれている。この言葉をより正確にいうならば「“合併を望んだ”のは韓国政府ではなく、一進会というただの政治結社であり、しかも一進会の要求は“対等合併”であり、日本による“吸収合併”ではない。日本は“対等合併”のふりをして一進会を騙し、条約締結後に用済みとなった一進会を解散させている」。”

 私なりに思うところ。

 歴史学において、一進会の位置づけは変遷してきた。戦後の黎明期では、一進会というのは「日本の傀儡」「日本のアジア主義者たちが作った御用団体」という見方が支配的だったが、近年では「対等な合併を望んでいた」という点が重視されている。
 もっと早くから評価が修正された存在でいえば、開化派の金玉均がそうだろう。朝鮮王朝が開国したため日本に留学し、福沢諭吉の教えを受け、日本に倣って朝鮮の近代化を目指した。日本政府の支援を当てにしてクーデターを起こしたが、失敗した。これもまた、昔は「日本の傀儡」という一方的な見方が強かった。1894年、日清戦争が起こる前の時期に暗殺される。
 (金玉均について知りたければ、安彦良和「王道の狗」がおすすめ。あくまで漫画でフィクションだけれど、作者がひじょ~~によく調べて書いているから。)
 金のような思想は、日本の歴史をよく知っている日本人の方が、むしろ分かりやすいのではないか。幕末の日本人は、不平等条約に不満を抱きつつ、西洋人を好待遇で招いて、必死に西洋の技術を取り入れようとした。
 日本が西洋に学びつつ、独立を保ったように、朝鮮人も、日本に学びつつ、独立を守ろうと懸命な人がいた。そういった朝鮮人の希望が、跡形もなく粉みじんになったのが日本の韓国併合だった。(金玉均の同志だった朴泳孝は、併合後には親日派として日本の貴族院議員になっている。)
 そもそも朝鮮人が心の底から併合を支持していたなら、9年後に3・1独立運動という形で不満が爆発するはずがない。この単純な事実は、繰り返し言っておく。

 

 参考。金玉均については「梶村秀樹著作集1」で読んだ。