そういえば思い出したが、「あんたのせいで皆殺された」というめちゃくちゃな責任転嫁に傷ついた、小さいころの伊黒。一見不思議だけれども、心理学的にはそう珍しいものではない。
幼い伊黒の育った環境は、現代でいうと虐待サバイバーのようなものだった。そしてサバイバー(虐待を生き延びた経験者)は、大人になってからも自尊心や自己評価が著しく低いという追跡調査がある。
精神障碍の一つに、自分の顔を「極端に醜い」と思い込む醜形恐怖というのがあるが、伊黒が常に口元を隠しているのは、醜形恐怖が作用していると思われる。
(実話に基づいたささやななえ先生の漫画「凍りついた瞳」でも、虐待を受けていた女の子が、自画像を描かせてみたら極端に醜く書いた、というエピソードが出てくる。)
実際に口端に傷があるとはいえ、傷といったら実弥も傷だらけの体だし、鬼殺隊のような危険な仕事で顔に傷は珍しくないはず。