馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

歴史よもやま話。ヒトラー、ムッソリーニ、フランコ…。右翼の独裁者に、共通の理念はあったのか。

 

 これ。やっぱりツッコミ多数入ってる。とはいえ、世界各国の共産党が「共産主義」という共通の理念を掲げているのに対し、右翼というのはちょっとわかりにくい。
 ヒトラームッソリーニファシズムから多大な影響を受けていたが、自分たちのことを「ファシズム」だとは言わなかった。ムッソリーニも、「ファシズムは輸出品ではない」といっていた。
 「ファシズム」という言葉は、もともとイタリア語で「団結」「結束」を意味する「ファッショ」からきている。イタリア語由来だから、というわけではないが、スペインのフランコポルトガルサラザールは、政敵から「ファシズムファシストだ」といわれたのであって、自分たちで名乗ったわけではなかった。
 (ところで、「独裁」の語源や定義は知らないけれど、、強大な権力を持った国王や皇帝の場合は、「専制君主」とされる。王様でもない権力者・指導者、ヒトラースターリンが「独裁者」と言われている。)

 

 たまに、「ナチスは“国民社会主義”だから左翼だ」という意見も見かけるが、そもそもヒトラーの思想がめちゃくちゃなので、右とか左とか分けづらい(と思う)。
 芝健介「ホロコースト」第1章がとても勉強になるけれど、ヒトラーは「国際共産主義運動ユダヤ人が裏で操っている」「ソ連ユダヤ人に支配された国」と妄想していた。
 反共なら右翼ということだが、一方でゴットフリート・フェーダーの影響を受けて、「国際金融資本はユダヤ人が牛耳っている」と妄想していた。(フェーダーは、「利子制度はユダヤ的資本主義の本質」「利子奴隷制の打破と銀行の国有化」を唱えた反ユダヤ主義の経済学者。ヒトラー反ユダヤ主義にはまるきっかけになったという。石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」32ページ。)
 「国民社会主義」とは、一応整理してみれば、「国民」(ドイツ民族)の団結を主張して国際共産主義運動を否定し、「社会主義」を主張して国際金融資本を否定する思想である。

 もっとも、スターリンソ連社会主義を、「ロシア民族の偉大な伝統」と強引に結びつけた。これは左翼が右傾化した、といえるかもしれない。時代的な流行もあるだろう。