馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

異世界転生物のテンプレは、すでに「ドラえもん」がやっているので悪くはない。

 よく馬鹿にされる流行の異世界転生物が、なぜ痛いのかっていうと、自分をレベルアップさせるのではなく、相手をレベルダウンさせているから。
 現代では冴えない(ついでにモテない)男性でも、文明の遅れた世界にワープすれば、バカな未開人に効率的なやり方を教えて偉くなったり、美人の女の子に感謝されたりしてチヤホヤされる・・・。
 いや、悪くはない。発想は安易に見えるが、もともと国民的人気漫画「ドラえもん」だって、そのテンプレだから。

 ダメな少年のび太は、自分をレベルアップさせるのではなく、未来の秘密道具で自分をかさ上げしようとする。つまり、下駄を履く。
 (どの巻か忘れたけれど、のび太がタイムマシンで原始時代に行って、現代の道具を使って原始人を驚かせて王様になろうとする回がある。これなんかまさに、異世界転生的な発想と欲望だ。「ドラえもん」では、この種のエピソードが多い。)
 「ドラえもん」の場合、のび太はすぐ調子に乗るから(あるいはアホだから)、道具を使いこなせず失敗する、といった自業自得的オチを付ける。また、ときどきSFネタを挟み、話のレベルを上げる、といった工夫がされている。大長編(映画版の原作)では、特にガチなSFネタや歴史ネタが多い。
 だから異世界転生も、「あんなこといいな できたらいいな」で終わらず、何か一ひねりあればいいんだ。