馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

清盛、死す! 5月の「100分de名著」、「平家物語」第2回。

 能楽師・安田登氏の解説によって、まず琵琶法師に弾き語りされ、長年日本人に親しまれてきた平家物語の、優れたリズムとか、テンポの良さが分かるようになっている。
 そして、清盛の最期。平家物語を含めた諸種の文書には、「一族を挙げて、東国を平定すること」と、「仏事供養は簡素にすること」との遺言が記されている。

 吉川英治「新平家物語」では、地の文で吉川氏が、「頼朝の首を我が墓前に供えよ」というのは、「後の人の憶測」だとしている。しかし、一次史料である「玉葉」や「吾妻鏡(東鑑)」でも、清盛が源氏討伐に執着していた様子がうかがえるので、「平家物語」も全くの作り話ではない。
 ともあれ、死に臨んで「(頼朝のこと以外)思い残すことはない」という平清盛。当時の死生観でいえば、死後の天国や地獄を考えない傲慢ということになるだろうが、解説でいわれたように、ある種の力強さとカッコよさを印象付ける。ダークヒーローとしての清盛像が、こうして完成する。