馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

17世紀のアメリカと、学級会の「イジメ」。2月の「100分de名著」、第4回の感想。

 番組の解説ではふれていなかったけど、フランス革命を批判していたバークが、「進歩や改良を否定していたわけではない」例として、アメリカの独立革命を評価していたことがあげられる。
 バークはイギリスの下院議員を務めていたが、アイルランド人だったので、アメリカにイギリスの植民地だったアイルランドの運命を重ねていたと思われる。

 アメリカ独立革命はいいが、フランス革命はダメだ、とバークは考えた。フランス革命は民衆が熱狂しすぎて、王制を廃止するだけでなく、王様を処刑した。王妃も処刑した。それでいながら、ナポレオンが現れて、苦境に陥ったフランス軍を次々勝利に導いてヒーローになると、今度は国民投票で皇帝戴冠が決まった。
 ただし、トクヴィルが高く評価したアメリカの中間領域、すなわち地域共同体が、常に問題なかったわけではない。内藤朝雄「いじめの構造」では、トクヴィルアメリカの民主政治」(講談社学術文庫)を引いて、17世紀のアメリカがピューリタン主義の厳格な倫理規範に支配されていて、少しでも逸脱するものを地域住民がリンチにかけていたことをあげる。内藤氏によれば、これは小学校の学級会などが、話し合いによって「民主的」に特定の子供をつるし上げるイジメと共通性があるという(257~260ページ)。
 というわけで、解説で中島岳志氏がパットナムを参照していったように、ゆるやかで複数の選択肢がある共同体、というものが大事になる。これはパットナムだけでなく、内藤朝雄氏の一連のいじめ分析と共同体論も参考になるだろう。

 余談。

 実はまだ、バーク「フランス革命省察」や、トクヴィルアメリカのデモクラシー」を読んだことがない。解説本とかの知識だけ。ただまぁ、バークの保守思想を評価するカール・R・ポパーの著作は愛読しているし、「熱狂して一気に変えようとするんじゃなくて、少しずつ変えていこうぜ」という考え方は基本的に賛成。

 重要な古典ということはわかっているんだけど、「当時のフランスやアメリカのことを、そんな詳しく知りたいわけでも・・・」としり込みしていた。その点、他に取り上げられていたロバート・パットナム「孤独なボウリング」は、時代が近くて興味がわいた。いつか読んでみたいと思う。

 

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生

 

 

 本体6800円、税込みで7344円。た、高い…。図書館で見るしかないな。

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