馬と鹿と野と郎の日記

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

国際法、というけれど。

 

国際法 (ちくま新書)

国際法 (ちくま新書)

 

  先月、ちくま新書から「国際法」という本が出た。著者は最近お亡くなりになった大沼保昭氏。遺著が一般向けに分かりやすく書かれたであろう国際法入門となった。

 

「徴用」資産差し押さえ 安倍首相が対抗措置の検討指示 | NHKニュース

 「先般の判決は国際法に照らしてありえない」 安倍総理は「国際法」と連呼するのが好きなようだが、特別国際法に詳しいようにも見えない。ひとり安倍総理や河野外相だけでなく、ネットで「国際法から言って・・・」「国際法上~」なんて言っているほとんどの人が、詳しいようには見えない。
 かく言う私も詳しくないのだが、そもそも国際法学者によっても、国際法というのは解釈が別れている。素人が「国際法上こっちが100%正しい」というのは「思い込み」というんでないかい? 
 戦前の日本は、日露戦争の勝利によって、ロシアが持っていた南満州鉄道の権益を獲得した。一方中国では、蒋介石の国民党政府による統一後、国権回収運動といって、アヘン戦争以来諸外国に奪われていた主権を取り戻そうとするナショナリズム運動が起こっていた。

 hokusyu氏も参照していたエピソードだが、加藤陽子「戦争の日本近現代史」第9講によると、中国が日本の満鉄に並行して線路を敷いたことで、日本の世論は「国際法上正当に獲得した権益が侵害された」と激高した。
 しかし実際には、必ずしも国際法違反ではなく、日本の主張はリットン調査団の報告書でも全面的に認められることはなかった。結果、怒って国際連盟からの脱退、というパフォーマンス以上にはならない愚策に走ってしまった、らしい。

 別にまたまた日本は国連から脱退して孤立するだろうとか、軍靴の足音というつもりはない。ただ、詳しくもないのに「国際法違反」と熱くなったりすれば、ちょこっと恥ずかしいことになるんじゃないかな。

 

戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)

戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)