馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

野田サトル「ゴールデンカムイ」16巻の感想。土方歳三と日本初の共和国。

 ※ネタバレ注意。

 「ゴールデンカムイ」の16巻読んだ。土方一行パート。土方は杉元たちと別行動になり、しばらく出番がなかったが、そのためか濃いエピソードだった。

 かつて伝説の人斬りといわれた男が、明治になってから正体を隠して結婚していた…、という設定だけ抜き出すと、まるで「るろうに剣心」。しかし話は全然違う。血塗られた過去ゆえに、なおも救われない生きざまが印象的。

 また、鶴見中尉に「幕末の亡霊」といわれた土方歳三(第34話)だが、北海道独立をもくろむ前向きな理由が分かったのもよかった。そういえば榎本武揚は、日本初の共和国を目指して「蝦夷地共和国」を宣言し、幹部人事は士官たちの「入札」という選挙形式で決まった(井上勝生「幕末・維新」162ページ)。明治の近代化は、榎本ら開明的な旧幕臣も取り込むことで進められた。
 打って変わって、ギャグの杉元パート。杉元が、強引な理由でハラキリショーをはじめる。「これだ!!」じゃねえよ。この調子だと、アーマードコアの新作botみたいに、なんでもかんでも「アシリパさんに伝わる」とこじつけてやりそう。そして、月島軍曹のスルースキルにますます磨きがかかった。