馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

韓国社会の「清算」思考と、日韓条約

 韓国社会では、盧武鉉政権時代の「過去清算」でも、文在寅政権の「積弊清算」でもそうだが、「間違った過去をすっきり清算して、ゼロから再出発しよう」という考え方が好きである(特に進歩派は)。
 韓国の歴史は、特に近現代は思い通りにいかないことの連続だった。日韓条約も、当時朝鮮戦争の傷跡を引きずり、アフリカ並みに貧しかった発展途上国の韓国は、日本と対等な立場で交渉できなかった。韓国人からすれば、「不公平な条約」となる日韓条約。1995年には、「日韓条約破棄を促す決議案」が韓国国会議員の3分の1以上の支持を集めた(高崎宗司「検証日韓会談」、「はじめに」の2ページ)。
 一方で日本側から日韓条約を考える場合、とりあえず「無償3億ドルを出した」というのは大きい。それゆえに、「あとは韓国の国内問題ですよ」というかたくなな姿勢を生み出した、といえる。ちなみに、「検証日韓会談」によると、無償供与3億ドルのうち実際補償に使われたのは、約5・4%だけだった(203ページ)。
 「慰安婦」の場合、日韓交渉では補償対象にならなかった(木村幹氏によると、一応「慰安婦」の未払い賃金などに、言及があったらしいが)。そのため、日本側にも何もしてこなかったといううらみがあるので、アジア女性基金とか、日韓「慰安婦」合意とか、一応の謝罪と補償は行われることになった。
 それに対し、元兵士・軍属や、元徴用工ら労働者は、韓国政府が補償対象として3億ドルを受け取った。日本側からすれば、「慰安婦」のような「例外」から韓国の補償要求が一線を越えたことになり、受け入れがたく思っているようだ。
 まだあり得る案としては、あの3億ドルを全額分配しなおして補償することをベースに、なお被害者の救済に足りないお金があれば、日本企業が出資することだろう。

 

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