馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

エマニュエル・トッド氏「子供を増やしたければ、もっとルーズになりなさい」

 最近、エマニュエル・トッド氏その他、複数の海外知識人のインタビューを集めた朝日新書「世界の未来」を立ち読みした。トッド氏は、「子供を増やしたければ、もっとルーズになりなさい」といっていた。
 数千万人が暮らしながら、ごみの散らかってない綺麗な東京をほめつつ、一方で命というのはもっと汚い、猥雑なところから生まれると指摘。トッド氏の母国フランスでは、婚外子が多いということにふれつつ、トッド氏自身も最初の妻と離婚が成立していないうちに、別の女性と子供を作ったことを告白。
 「あんたもかい!」と思ったが、このように権威ある学者が率先してルーズだから、フランスの出生率も回復しているのだろう。いい話だ。国会議員は、額縁に入れて執務室に飾ってほしいくらいだ。

 さらにトッド氏は、「エリートに独創性がない」「高等教育は、時間をかけて独創性のない人間を選別する仕組み」と、欧米の大学と政治家をけなしていた。こういう発言は、日本だったら一昔前に言われつくした感があって、今、逆に聞かなくなった。

 今の優等生的な模範解答というのは、「いえいえ、独創性なんてどうやって測るのかわからないし、結局テストの点数が一番はっきりした基準になりますよ」というものだろう。私だって、あほな文部科学大臣が「独創性のある人材育成を」とか言い出せば、腹が立ってそう言っている。

 けどトッド氏ですよ。あの、乳児死亡率その他のデータから、ソ連の崩壊を鋭く見立てた独創的研究者エマニュエル・トッド氏から、「エリートに独創性がない」といわれたら、「そうですね」と平伏するしかない。痛快な本だ。(トッド氏のところしか、読んでないけど。)