旧宗主国と、旧植民地の言語をめぐる状況が気になって、図書館で本を借りてみた。が、これは一通り調べるだけでも骨が折れる、と思った。
たとえば、フランス語が普及している国や地域を結ぶための国際機関、フランコフォニーというのがある。平野千果子「フランス植民地主義と歴史認識」では、第6章でその用語の起源と、国際機関設立の歴史的経緯を概説している。同書は、フランスについて独立したもろもろの論文集であり、この短い章を読んだだけで、フランス植民地の細かい事情が分かるわけではない。
とりあえず、フランコフォニーとは、セネガルやニジェール、チュニジアといったフランス植民地から独立したアフリカ諸国によって始まったとされているが、その創設メンバーであるセネガルでさえ、フランス語話者の割合は少ないようだ。(「セネガルとカーボベルデを知るための60章」の第24章を参照。)
セネガルの公用語は一応フランス語なのだが、当然原住民の現地語も複数あるし、アフリカ地域にありがちな政治的混乱や貧困で、教育が十分に普及していない。また教育を受けたとしても、日本人が中学・高校で学んだくらいで英語をペラペラしゃべれないように、フランス語を使いこなせるかどうかは別問題になる。
こういった詳しい言語事情を調べるには、旧植民地の国・地域の数だけ本が必要だし、他にもフランコフォニーのポルトガル版みたいなものとして、ポルトガル語諸国共同体というのがあるらしく・・・、ここらへんでめんどくさくなってやめた。
CiNii 論文 - 権威語としてのポルトガル語 : 東ティモールにおける公用語化と言語政策の一考察 (特集 ポルトガル語圏における社会・言語・政治問題への取り組みに見るグローバル化)
とはいえ、東ティモールは気になる。ヒマができたら読もう。
この前貼った画像のように、アフリカは旧宗主国に深く影響されているし、南北アメリカ大陸諸国の公用語もそうである。ところがアジアでは、英語圏を除いて影響は限定的・・・、に見える。
ベトナムだけではなく、フランスの委任統治領(という形式の、事実上の植民地)だったシリアやレバノンでも、フランス語は公用語ではないようだ。
珍しい例が東ティモールで、ここは1976年までポルトガル植民地で、公用語がポルトガル語になっている。(まぁ単に、支配期間が長かったからかもしれない。ポルトガルは、ヨーロッパ諸国の中で最も早く植民地支配に手を付け、一番最後までやっていた国、という不名誉な記録を作った。)