馬と鹿と野と郎の日記

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

加筆修正。教育の「増やせよ詰め込めよ」と、「自分の内なる敵と戦え」という道徳訓話。

mainichi.jp

www.hokkaido-np.co.jp

 障碍者への強制不妊手術が、「予算枠を減らしたくない役所の論理」によって奨励されたという新聞記事は、肥大化した官僚制の論理とか、「精神なき専門人」のグロテスクさを改めて考えさせる。
 あのアドルフ・アイヒマンも、ユダヤ人虐殺という未曽有の犯罪を前に、「政策の一貫性」といった小役人的事柄にちまちまとこだわっていた。
 いじめ問題を受けて道徳が教科に格上げされたり、今年の指導要領改訂では考える力とか議論する力を重視するよう加わったらしいが、ネットの反応を見ると関心が低い。ゆとり教育は集中砲火を浴びたし、最近では、歴史教育から「坂本龍馬」や「武田信玄」を減らして、もっと授業内容を工夫しよう、という高大連携歴史教育研究会の提言が波紋を呼んでいた。どうも俗流教育論の悪しき流れとして、教えることが減らされるのには敏感に反応するが、増えることには無関心なようだ。
 日本の長時間労働も、仕事を減らすより増やして残業することが美徳とされる企業風土等の問題があるだろう。大人の長時間労働を何とかするなら、子供への詰め込み教育も再検討したら?

 文科省はゆとりバッシングのトラウマがあるのか、もう授業内容を増やすことしかやっていない。「減らす」ことが忌避される風潮の中で、高大連携歴史教育研究会は火中の栗を拾ったのだ。ツイッターでちょこちょこ文句を言っている人は、こんな時こそ与党精神で建設的な代案を示すべきだ。

歴史の教科書から「坂本龍馬」が消える? 東大教授に聞く「歴史にロマンはいらない?」 | AbemaTIMES

高校の教科書から坂本龍馬などの人物が消える?「賢明な判断」と肯定する人・「意味がわからない」と戸惑う人など - Togetter

 追記。

 話は変わるが、先日野暮用でコンビニに行ったら、本棚に「君たちはどう生きるか」の漫画版が3冊くらい並んでいて、本当に売れてるんだな~と思った。立ち読みして興味がわいたので、積読だった我が家にある原作を読み始める。
 ブログ「紙屋研究所」は、「自分の頭で考える」という漫画版の力点に、違和感や危うさを表明した。大枠では紙屋研究所の記事に同意するが、私なりの違和感もここで記す。

 誰もがたいてい、他人の思考に流され、気まぐれな世論に踊らされるよりも、自分の頭で考える方がかっこいいと思っている。が、たいていそうはなれていない。「自分の頭で考える」といっても、どこかに落とし穴があるのだ。
 紙屋研究所によると、「文科省が最近作った『私たちの道徳』には、『宇宙兄弟』の南波六太の言葉が登場し「自分の内なる敵と戦え、困難の原因はお前のなかにある」という趣旨のセリフを名言扱いさせています」という。

 これを現在の与党・自民党に当てはめてみるとどうだろう。野党の質問をはぐらかすヘラヘラした答弁を繰り返す安倍首相は、「自分の内なる敵」と戦っているのか。何かというと安倍首相が「民主党政権の時代より良かった」と強調する点は、内なる敵と戦っているといえるのか。そしてそれに対し、「自分の内なる敵と戦え」などという道徳訓話に、どれだけ意味があるのか。

 坂本龍馬吉田松陰の名前を憶えても、佐川宣寿国税庁長官のような人間に育ったらどうするのか。おそらく問題は、教育に道徳訓話が「足りない」ということではない。

『君たちはどう生きるか』 - 紙屋研究所

 関連記事

国税庁のアイヒマン - 犬沼トラノオ日