馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

3・1独立運動の記念日に思う。

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文大統領、慰安婦問題への日本の姿勢を批判 | ロイター | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 夕刊を見て、「あ、今日は韓国で3・1運動記念日だった」と思い出した。

 3・1独立運動は、日本に対して「自由と平和」を訴える韓国人の非暴力的なデモ行進から始まった。当時の新聞が報じたり、今でも右翼が言っているような「朝鮮人の暴動」ではない。
 面白いことに、朴慶植「朝鮮三・一運動」によると、昔の北朝鮮では3・1運動が「非暴力のデモ」だったゆえに評価されていなかった。金日成武装抗日闘争を絶対視する北朝鮮では、相対的に3・1独立運動の扱いが低くなったのだろう。
 ところで、文在寅大統領の演説が、また日本で反発を読んでいる。日本政府は、「政府間の合意は極めて重い」と繰り返している。1965年の日韓条約締結の時は、まだ韓国側が軍事独裁政権だった。90年代のアジア女性基金の時は、韓国側と合意して始めたわけではなかった。(水面下では政府間合意があったらしい。)日韓「慰安婦」合意は、日本政府が主張するように、民主的に選出された朴槿恵政権と結んだという点で、確かに重いといえる。

 しかしなぜ重いかといえば、民主主義が市民一人一人の意思を尊重しているからだ。となると、元慰安婦の意思を十分確認せず合意を結んだことを日本政府が「重い」というのは、トートロジーになってしまう。
 安倍首相や自民党は、中国への対抗を意識してか、「法の支配」という言葉を好んで使う。しかし法治主義とは、「法律は法律だから従うべきだ」というトートロジーに陥ることもある。一方で韓国は、「自由と民主主義」の内実を豊かにするために、しばしば一度決まった法律や条約をひっくり返すことも辞さないわけだが、それで政権が変わるたびに前の政治が否定される不安定さにもつながっている。

 どちらがヨリ世の中を良くしていくかというのは、今は答えを出さないでおこう。