犬沼トラノオ日記

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

政治への要望書。家族の扶養義務を見直そう。代わりに福祉を充実させよう。

 私は兄弟・姉妹の扶養義務、という民法の規定によって、大いに苦しめられた。といっても、私が兄弟を扶養することになって苦しんだ、という事態ではなく、逆に「扶養される存在」だったから、弟A(次男)から叱咤激励され続ける形で、苦しんだ。
 細かく記すと長くなるので、要点だけ書く。
 私はうつ病過敏性腸症候群、肩こりや体中の疲労感など、様々な病気で働けず、両親や兄弟と同居して暮らしていた。
 弟Aは、自分に扶養義務がのしかからないように、一生懸命私を叱咤激励して働かせようとした。あるとき、「兄弟の扶養義務なんて、ないはず・・・」とうっかり調べもせず口にしたら、弟Aがワナワナ震えて「あるよ」と、歯をむき出しにした顔で怒られた。
 弁護士やファイナンシャル・プランナーによると、兄弟・姉妹の扶養義務は、「自分の生活に余力がある場合」という弱い義務で、強制力は少ないらしい。

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 しかし私の弟Aの場合、「将来会社を起こしたい」という青写真を持っており、収入の一部をせっせと貯金している。その貯金が「経済的余力」とみなされれば、扶養義務が生じるかもしれないし、そうなれば、弟Aから「俺の夢を食いつぶすな」と説教されることになるだろう。
 「病気だから働けない」というと、「じゃあ、福祉をもぎ取れ」「したたかに生きろ」と、また何かの説教をされることになった。しかしそれぞれの病気が軽度で、障碍者年金が支給される身体障碍者など、福祉の対象になるほど重症でもないので、結局また「働け」と説教されるループになった。
 病気であっても、扶養義務が発生して家族の負担になるということは、病気の家族がいれば、健康な人間の数倍負担するということになる。
 後のほうになると、弟Aは、「勘弁してくれ、俺はお前の面倒なんか見たくないよ」というのが口癖になった。問題は、弟Aが個人的に私を助けたいと思わなくなっても、民法で定められた扶養義務という法的制度的な理由から、私に対して叱咤激励し続けたことだ。
 兄弟を扶養、支援することは、個々の家族間の善意や愛情などに任せるべきであって、法的な扶養義務を重しくてはいけない。扶養義務が、家族の美しい助け合いどころか、家族の不和やあつれきのもとになっている。
 近年では、親の貧困が子供の受けられる教育などに影響し、貧困が子供に連鎖していく現象が問題視された。私の母は、病的というほどではないが、体が弱いほうで、近年では腰痛で動けないこともある。体が弱い親が体の弱い子供の面倒を見るとなると、これでは「病弱の連鎖」が起こるではないか。
 若いうちから病気を適切に把握し、素早く治療に取り掛からなかった私にも罪がある。たまに助言などすることはあったが、病気がよくわからず半ば放置していた家族にも、罪があるかもしれない。そして現状では、そのすべての責任は「家族」に跳ね返る。
 お笑い芸人の河本準一氏のように、家族仲が悪いわけでもなく、息子の稼ぎとは別に生活保護を受けていた、という道徳的によろしくないように見える個々のケースがあったなら、個々のケースに基づいて倫理道徳を議論すればいい。なぜこの一件をもってして、ただちに生活保護支給条件の扶養義務が重くなったのか。
 そうやって家族単位の責任が重くなる結果、結婚したり子供を産むことは大きなリスクにもなり、おそらく少子化が進んでいる。フランスでは、子育てに対して政府の福祉が充実した結果、出生率が回復したという。それに対し、相変わらず「子度は親が育てるべき」という保守的意識の強いイタリアやスペインでは、出生率が低迷している。
 自民党改憲案のような方向性、「家族は助け合うべき」という道徳的説教など、問題解決にならないのは明らかだ。

 書評・最新書評 : 国家がなぜ家族に干渉するのか―法案・政策の背後にあるもの [編著]本田由紀・伊藤公雄 - 齋藤純一(早稲田大学教授・政治学) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
 近年ベストセラーになった下重暁子「家族という病」では、「殺人で一番多いのは家族間」というデータが取り上げられている。同書は読んでないが、家族こそが犯罪者予備軍だ、ということではなく、家族は最も身近な他人だからこそ、愛憎も強くなるのだろう。愛はいいとして、憎しみも生まれるなら、家族を自然に任せて放置するのではなく、仲たがいを緩和する制度設計をしなければいけない。
 河本準一氏というたった一例で扶養義務を強化していいなら、この記事に書いた私の家族というたった一例でも、扶養義務を見直していいはずだ。私の家族のことは、偶然、たまたまそうなっただけで、制度は関係ない? 個人的な、些細な問題? 河本準一氏の時はそうはならなかったのに。
 まだ仲の悪くない兄弟は、いるのだろう? 家族を救え・・・。

 

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