馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

フランスの、ナチスと植民地支配への向き合い方。

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 今月の「100分de名著」は、ハンナ・アーレント全体主義の起源」をやっている。

 第2回では、欧米が植民地支配にあたって19世紀に生み出した人種主義が、ドイツでナチズムに発展した、という要約がなされている。

 ナチスは、ヨーロッパが非ヨーロッパを支配したやり方を、ヨーロッパ諸国に適用した。ナチスはヨーロッパ帝国主義の鬼子なのだ。このようなナチス論は、フランス領西インド諸島出身のエメ・セゼールが、「植民地主義論」で展開した西洋批判と通じているように見える。

 欧米の戦後の向き合い方をたどると、まずナチスの暴虐とナチスへの協力が反省され、現在、植民地支配も反省するかどうか、揺れ動いているようだ。

 熊谷徹「日本とドイツ ふたつの「戦後」」によると、フランスでは1995年にシラク大統領が、フランス人がユダヤ人の逮捕や強制収容所への移送に協力した責任を認め、謝罪している。そして、2013年にオランド大統領は、「フランスが植民地だったアルジェリアでとった政策は残虐で不当だった」と発言している。(129ページ)

 その後オランド大統領は、アルジェリア訪問の際に植民地支配を謝罪するか注目されたが、結局それはなかった。

 このように欧米の謝罪と反省は、まだまだ不十分である。しかし、ここらへんがよく勘違いされているが、欧米が過去を完璧に開き直っているわけではなく、反省に揺れ動いている以上、日本も開き直れるわけではないだろう。

 

 

帰郷ノート/植民地主義論 (平凡社ライブラリー)

 

 

日本とドイツ ふたつの「戦後」 (集英社新書)

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