馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

「歴史教科書なんて、定説がコロコロ変わるのに意味あるの?」

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 NHKで、「歴史のへ~、ほ~ あなたの常識変わります!」という単発の番組をやっていた。父が録画していたんだよ。父は「英雄たちの選択」も「歴史捜査」も欠かさず録画している。テレビ番組表から時代劇と歴史番組を見つけ出す能力がすごいなぁ、と母がいつだったか言ってた。

 「意外と新しくない信長」「天下布武畿内を指していただけ」ってのは、ネットで聞いたことあるけど、テレビで見たのは初めてだった。

 けれど、正直「鎌倉幕府の成立は、1192年(イイクニ作ろう鎌倉幕府)ではなかった?」というネタでは、今更なんも驚かない。むしろ、「やっぱり1192年だったんだよ!」と旧説が復活したら、本当にびっくりだわ。

 番組でもちょろっとふれていたが、そもそも「幕府」というのが、幕府を率いた武士たちの自称ではない。ほら、大河ドラマとかでよくあるでしょ、武将が遠征先で、幕を張って陣取る光景。そこから生まれた漢語を、当時の公家や僧侶が武家政権を指して使っていた、だけらしい。(小島毅足利義満 消された日本国王」、32ページ)

 現代でいえば、「総理大臣」は正式な手続きで定められた役職だから、何年何月に就任したのかはっきりしているけど、「田中角栄が闇将軍として権力を確立した」のがいつ頃かは、人によって意見が分かれるだろう。鎌倉幕府の成立に諸説があるのも、たぶんそのような事情。

 しかし、こうも教科書に堂々と書かれていたような歴史の定説がコロコロ変わると、教科書に書いてあるからって確実なのか、歴史の授業に意味はあるのか、という疑問も出てくるだろう。

 最近私は、731部隊について集中的に書き込んでいた。731部隊の細菌戦、生体実験については、教科書にも一応記述がある。(画像は山川出版社の「詳説日本史B」)

 あるまとめサイトには、「教科書なんて何も書いてないのと同じ」というレスがあった。中途半端な知的エリート気取りほど、「教科書に書いてあるからって本当なのか?」と疑って、「アメリカ政府が公開した情報にはなかったよ~」なんてソースゼロのネット上の風聞を信じてしまうのだろう。

 私なりの考えでは、歴史教科書には検定というものがあるから、歴史学者の事実認定だけではなく、文部科学省のお墨付きもある。複数の専門家や組織が「確からしい」と認めたことを学ぶのは、それなりに意義があるだろう。

 731部隊の番組をやったNHKは、いつものように「反日」と言われたが、だったら731部隊の記述を通した文科省も、反日ということになる。まぁ世の中そういうこともあるかもしれないが・・・、そこまで言えるだけのソースが、明らかに不足している。