馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

「自分探し」と探すべき自分を持たない二人。 アニメ第3期「魔法陣グルグル」

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 (※原作後半のネタばれあり)

 今、ニコニコ動画で「魔法陣グルグル」5話やってる。テレビ放映に比べてやけに遅いんだけど、すでに原作漫画読んでストーリー知ってるし、別に急ぐ必要もないんで、テレビのほう見てません。

 誰もが「ストーリー進行が駆け足」と指摘していて、私もそう思うんだけど、原作のほうはギャグのために展開が遅い面もあった。(たとえば、シュギ村でギザイアを倒したのに、旅立たずだらだら村で楽な生活をしていたというギャグとか。)それを削ってサクサク進むのは、それはそれでいいかもしれない。後の重要な伏線になる、ククリの内面描写まで駆け足だけど…。

 グルグルキノコを食べた後の心象風景で、ククリが「私がいない」「私に会いたい」といっているのは、後から振り返ると、適当に詩的なセリフを言わせたんじゃなくて、ちゃんと作品のテーマを表していた。

 ククリはミグミグ族とかグルグルとか、自分のルーツをたどることで、「自分」の答えを見つけてゆく。つまり「自分探しの旅」。

  けれど一方で、ニケに示される、探すべき自分を持たないおちゃらけた男主人公がいる。だからただのギャグやパロディー漫画だと思っていると、読者がグルグルの秘密に「気づけない」という巧みな構造があった。

  (ニケは最初、スケベで女好きのくせに、ククリの恋心を正面から受け止められないという、寅さんとか諸星あたる的主人公だったが、そんなニケもククリとの旅を通して成長し、成長することで気づく。)

  それだけに、アラハビカ編以降は「グルグル=ククリの心象風景」というテーマが肥大化して、作者がストーリー作りに苦労している印象を与えた。とはいえ、それを差し引いても十分名作。

 ついでに思い出話。青年になってから古本屋で昔の「ファンロード」をあさって、グルグル特集号を見つけたら、ジュジュのイラストが一番多いことにびっくりした。

 当時は若く、まだオタクになりきってなかったので気づかなかったが、ジュジュは「普段は物静か、無表情」「神聖な立場と雰囲気」「実はおてんばで毒舌」といった、萌え要素詰め合わせみたいな女の子だった。