馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

ホネットの「承認をめぐる闘争」論と、マジョリティーの現在。まとめ。※追記あり。

togetter.com

 (追記部分)

 入れ忘れていたが、先駆的な映像メディア論として有名な、ベンヤミンの「複製技術時代の芸術作品」も重要。
 特に次のくだりは、今も示唆に富む。「ファシズムは大衆に、彼ら自身を表現する機会を(彼らにふさわしい権利を、では決してなく)与えることが、自分の利益になると考える。大衆が所有関係を変革する“権利”を持っているのに対し、ファシズムは所有関係を温存しつつ、大衆に一つの“表現”を認めようとする。」(ヴァルターベンヤミンベンヤミン・コレクション 1」、626~627ページ。傍点を”に変更

 ベンヤミンマルクスから強い影響を受けており、数々の論文で近代資本主義(モデルネ)からの解放を説いている。しかし、解放されるべきプロレタリア大衆が、ファシズムやナチズムの方に引き付けられ、ユダヤ系ドイツ人であったベンヤミンは、国外に亡命を余儀なくされた。

 「複製技術時代の芸術作品」において、初めに引用された作家ド・デュラス夫人の「真とは彼にできること。偽とは彼が望むこと」という言葉は、今でもリベラル・左翼の苦悩を表現している。

 リベラルや左翼は「格差を生む過剰な競走が悪い」とか、「男性中心の価値観にとらわれてはいけない」といって、それが社会的弱者にできる「真」だと思っているのだが、「彼が望むこと」は、男らしい価値観のまま順調に出世することとか、外国人労働者を排斥することかもしれない。