馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

光州事件の背景として挙げられる、「反逆者の土地」という歴史。

inunohibi.hatenablog.com

 さて、どうせなら朝鮮半島の歴史にちょっと詳しいと自負する俺っちが、歴史的背景も説明しよう。
 光州事件そのものは、この映画その他を通してちょっとでも興味を持った人はすでに調べてるだろうから、省略。
 さらなる背景として、なぜ軍部の独裁政権に反発する民主化デモが、光州でもっとも激しくなったのか。直接的には、光州市のある全羅南道(および北道)が、独裁に抵抗する野党系指導者の地元だからなんだが、もっと由来をさかのぼってみれば、ここが「百済の国」だったから。

 
 世界史・日本史の教科書でもちょっとだけやるんで、覚えている人もいるだろうが、古代の朝鮮半島では、高句麗新羅百済が争う三国時代というのがあった。

 このうち南西の百済は、中国の唐と手を結んだ新羅に滅ぼされ、さらに百済の後継である後百済が、高句麗の後継を自負する高麗に滅ぼされ、以降「反逆者たちの土地」という支配層の評価が固まってしまう。

 
 韓国が奇跡といわれる経済成長を成し遂げた時代にも、軍部は朴正煕をはじめとして慶尚北道・南道出身者が多く、全羅道地域は発展から取り残されていた。

 1997年、全羅道出身の金大中氏が、大統領選に勝利した。日本では「初の左派大統領」として報じられたが、韓国人にとって重要な意味は、後百済以来1000年ぶりの湖南(全羅道の別名)人による権力掌握であり、「湖南人1000年の恨(ハン)」を晴らしたのである、と黒田勝弘氏は言う(川村湊・編「韓国」、181ページ)。ほんまかいな。

 
 ちなみに百済の貴族たちは、大和朝廷が助太刀した白村江の戦に敗れた後、日本を頼って亡命したものも多い。

 そこで朝鮮半島の文化・技術が日本に伝えられ、また、日本書紀には光仁天皇の妃で、桓武天皇の生母である高野新笠が、百済からの渡来人であると記されている。
 2002年日韓ワールド杯の前には、当時の天皇陛下(現・上皇様)がこの記述に言及して、「韓国とのゆかりを感じる」と発言された。

 

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