「文芸ジャンキー・パラダイス」カジポンさんのコメント。
”今年鑑賞した映画の第1位はDVDで観た2017公開の韓国映画『タクシー運転手~約束は海を越えて』です!こちらも1億点!”
(2019年12月28日の「最新文芸情報」)
作品内で述べられているように、ドイツ人記者のヒンツペーター氏は、韓国人のタクシー運転手キム・サボク(マンソプ)氏と再会できないまま、2016年に亡くなった。
この記事を読むと、映画が勝手にキム・サボク氏の経歴を改変したと受け取るかもしれない。なんかブックマークコメントでも、そう勘違いしている人がいる。
しかし映画は2017年公開で、おそらくヒンツペーター氏が2016年に亡くなったことを受けて作られた。
話の最後には、年老いたヒンツペーター氏の「彼に会いたい」という記事を見ながら、どこかでひっそりとタクシー運転手を続けているサボク氏が描かれていた。
また、作品内においてサボクは、妻を病気で亡くしてから娘と二人暮らしという設定だったが、実際のサボク氏について取材に応じたのは、息子さんだった。作品内では、キム・マンソプがヒンツペーターに対し「サボク」という偽名を使ったのだが、実際は「サボク」こそが本名のようだ。
おそらく製作者は、ヒンツペーター氏の証言を通してしか分からないキム・サボク氏について、想像で設定を作ったのだろう。
内容の感想。
ストーリーはベタといえばベタなんだけど、やはり光州事件という史実の迫力があるし、何より俳優陣の熱演が素晴らしい。
この映画は、韓国の映画賞を総なめにしたが、カナダのモントリオールで開かれたファンタジア国際映画祭でもソン・ガンホ氏が主演男優賞を受賞し、決して韓国の内輪受けでないことを証明した。
終盤のカーチェイスは、法華狼氏がいうには評価が芳しくないらしい。まぁ確かに、コミカルさを挟みつつも、全体として実話に基づいたリアルな演出をやっていたのに、カーチェイスだけ異様にリアリティーがなかった。
全速力で逃げたり追いかけたりしてる車に、単なるタクシーがどうやって追いついたのか? あんな細いあぜ道しかない山の中で、割って入れる脇道があったのか? など、ツッコミどころ満載。
しかし、ハリウッド映画のようなイケメン男優ではなく、どこにでもいそうな風貌のオッサンたちが、泣きそうな顔して肩をすくめて必死に運転する姿が迫真だったので、すべてを許す気持ちになれる。
一方で、話のたたみ方はちょっと寂しい。風景だけでもいいから、幕切れに光州市民の姿が欲しかった。
それ以外はストーリーに過不足なく、飽きさせない。
(長くなるので、次回に続く。)