馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

石黒監督(OVA)版「銀河英雄伝説」。最後まで見たので、その感想。

 (※未見の人はネタバレ注意)
 ファンの間でいわれている「皆殺しの田中」について。終わり近くでアンネローゼや出産の近いヒルダの命が狙われ、あわや死ぬかと思ったが、大丈夫だった。
 結局死んだ主要キャラクターは、命のやり取りをする軍人や、陰謀を巡らせていた悪役ばかり。罪のないキャラクターを死なせなかったあたり、「皆殺し」といっても、非常に節度があったと思う。

 
 銀英伝でよく言われる批判(感想)に、「敵の司令官が無能すぎる」といったのがあったけれど、あれは「無能な支配者層によって腐敗している銀河帝国(または同盟)」という設定なんだから、有能さを見せたらダメでしょ。
 序盤(原作でいえば、2巻くらいまで)の間に、少なくとも銀河帝国側は「無能な貴族」が一掃されるので、以降は戦場シーンにも緊張感が出てくる。

 
 本多勝一氏は、「よくできた文章は精密機械と同じ」といった(「日本語の作文技術」)。私も見ていて色々と違和感を感じるシーンがあったけれど、銀英伝のように緻密に作り込まれた世界観やキャラクターを、他人が下手にいじくれば、機械のように故障(作品が破綻)するだろう。
 作者やファンが他人の批判を「じゃあ、お前が書けよ!」というのは禁じ手だが、確かに私に銀英伝ガンダムのような傑作は書けないので、批評も謙虚にならざるを得ないね。
 (たとえば、ロイエンタールが反乱を起こす流れは、強引だったような…。それで、「自分だったらどう書くか」と勝手な想像を巡らせてみたけれど、うまい修正プロットが浮かぶはずもなく。)

 
 ただやっぱり、石黒版は長すぎる。今作るんだったら、もっと短くした方がいい。その点で、ノイエ版は評価できる。