馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

のっけから「お労しや」と出て…。吾峠呼世晴「鬼滅の刃」20巻の感想。

 「鬼滅の刃」20巻、読んだよ。電子書籍で買った。
 昔ながらの紙の方が好きだけど、SNSで案の定、書店の行列が報告されていた。品切れのリスクや、行列でコロナにかかるリスクを考えれば、いやおうなしに電子に移行するしかない。
 ようやくジャンプ本誌で読み始めたところまで、単行本が来た。

 (※ネタバレ注意)

 
 構成がうまい。黒死牟こと巌勝の回想は、早々と縁壱の最期を描く。年老いた縁壱は、鬼になって変わり果てた巌勝を見て、「お労しや… 兄上…」と涙を流す。
 このセリフがネットミームとして異様にはやっちゃったけど、それも納得のインパクト。読み進めるほど読者が、「本当においたわしいよ!」と言いたくなる、勝手に嫉妬に狂う巌勝の人生が独白される。

 構図としては「アマデウス」のサリエリモーツァルトで、本人にも同業者として素質があるからこそ、天才のすごさが分かって嫉妬する。だけど、それが(実の)兄弟ってところに、業の深さを感じるな。作者の…。
 巌勝が剣の強さにこだわるのは、武家の長男として生まれた環境的背景があるといわれる。おまけやファンブックでも、生まれから序列を重んじる性格とされる。ただ、それを考慮しても弟に対する感情は激烈で、「武家だから」というよりも、「サリエリなんだ」という方がしっくりくる。

 

 縁壱と巌勝、それぞれの回想における無視できない違いについては、こちらで言及。

 

(※先の展開ネタバレもあり)吾峠呼世晴「鬼滅の刃」18巻の感想。 - 犬沼トラノオ日記

 

鬼滅の刃 20 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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