馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

「吾峠呼世晴短編集」の感想。追記あり。

 吾峠呼世晴吾峠呼世晴短編集」を読む。

 表紙では「吾峠呼世晴」の文字が金色で縁取りされていて、「鬼滅の刃作者の短編集だよ!」というプッシュがムンムンと伝わってくる。
 作者がカバー折り返しのコメントで「未熟なところが多く、全裸で街中に放り出されたような恥ずかしさ」というだけあって、ストーリーが雑で、結末のカタルシスも少ない。一方で、軽快なセリフ回しや癖の強い登場人物は、今に通じるセンスを感じる。
 新人漫画賞を受賞したデビュー作「過狩り狩り」。「鬼滅の刃」の前身となった作品らしく、「鬼滅の刃」と同じ登場人物がすでに出来ている。しかし、「鬼滅」はここから相当少年漫画としてアレンジされているな、ということも分かる。
 「過狩り狩り」というタイトルは、カッコイイんだけど本編を読んでも意味が分かりづらい。これをわかりやすくすると、「鬼滅の刃」になるんでしょうね。

 全体的に殺伐とした世界観で、「鬼滅」の方が勧善懲悪してるけど、人が死ぬときは死ぬ残酷さは「鬼滅」にも受け継がれている。

 

 追記。

 「鬼滅の刃」を最初読んだ時、「話が進むにつれ、サイコパス、クズな敵が出てくるな・・・」と思ったが、鬼滅連載以前の作品を集めた「吾峠呼世晴短編集」も読むと、もともと作者はサイコパスとクズを描く才能があるんだとわかった。
 それを封印して正統派少年漫画を描くというわけではなく、長期連載の中でキャラを練ってサイコパス・クズを際立たせる、という風に進化している。
 ただまぁ、SNSを見ると「短編集」が熱く支持されているのも分かる。読み切りの短いページ数の中、ぶつ切りのように癖の強いキャラクターを出しているので、生々しいインパクトがある。

 

吾峠呼世晴短編集 (ジャンプコミックス)

吾峠呼世晴短編集 (ジャンプコミックス)