馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

慎重なクルーグマン氏と、今の日本経済を重ねて想う。

 邦訳で、クルーグマン氏の最も新しい議論を知りたい場合、この本になるようだ。(本自体はその後も出ているが、経済学の理論書で、日本経済について書いてそうにない)。
 日本にインフレ目標政策などを最初にすすめたクルーグマン氏。いわばアベノミクスの元祖で理論的支柱であるが、さすがに世界的に名高い経済学者として慎重なのか、「とはいえ、これは成功させるのが非常に難しやり方でもあります」とか、「私はアベノミクスが奏功する確率は半々だと思います」(108ページ)という文章も。
 また、物価の上昇に伴って賃金が上がらなければ、「デフレ・マインドに逆戻りしてしまう危険性があります」(144ページ)ともいってるんだけど、その後の3年間を見れば、クルーグマン氏の懸念当たってない? という気がする。
 ちなみに、2015年秋ごろには、「日本のデフレの原因は主に少子化」みたいな見解修正を行って、ネットの経済クラスタが騒いでいた。が、そういった分析は、とりあえずこの本には見当たらない。
 おりしも「国内景気、後退局面の可能性」というニュースが流れてきた。しかし、これまで安倍政権のもとで国内景気が良かったのも、世界経済の好調に助けられただけで、「運がよかった」というのが小熊英二氏の見解。私もある程度そう思う。最近の景気後退は、中国経済が減速した影響だろう。良くも悪くも安倍政権に景気を左右するほどの力はない、と思う。

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