馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

勤労統計の粉飾・偽装問題。賃金だけじゃない、ほかにも怪しい統計が・・・。追記あり。

 

  ジェイコブ・ソール「帳簿の世界史」でいってた、帳簿の三悪ってやつ。旧ソ連フランス革命前のブルボン王朝、統計をごまかせば、やがて体制が転覆する。

 この一件、エコノミストは賃金水準や失業率の数字を見ながら、アベノミクスは失敗だとか成功だとか論じていたわけで、それが全部オジャン、やり直しになってしまった。結構やばいはずなのに、世論の反応が鈍く見えるのが気がかり・・・。雇用保険の過少給付はあったが、一般市民は実害が分からなくてピンとこないのかも。

また忖度。勤労統計「データ改ざん」で露呈した見せかけの賃金上昇と雇用改善=斎藤満 | マネーボイス

 そして、この記事。賃金水準が偽装されていただけではなく、失業率も低く見えるよう偽装されているのではないか、という分析。私にはその妥当性を判断できる経済的・統計的知識などないが、安倍政権のもとで奇跡的なまでに低い水準の失業率には、色々とあやふやで怪しい点がある。
 昨今は人手不足、人手不足といわれているから、失業率が低いことに何の不思議もなく見える。が、一方で、保育・介護業界などでは、いぜん仕事がきつくて低賃金のため、あえて就労しない「待機組」が多く存在する、という指摘もある。
 そもそも、少し前にも書いたことだが、「インフレが進むと、失業率が下がる」というのが高橋洋一氏らリフレ派の考え方だったのに、インフレ上昇率が微弱なままで、失業率が改善し続けている。それなのに、「失業率が改善したのは、アベノミクスのおかげ」ということにされている。

アベノミクスが雇用改善に寄与した根拠 | 野口旭 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 さて次は、2017年のこの記事。

 大前提として、勤労統計が全数調査でなかったということは、記事にある「就業者数」も正しいのか? いや、ど素人なので、よくわからんけど。

 野口旭氏の分析を慎重に読むと、「「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由で非正規就業に甘んじている、いわゆる不本意非正規就業者は、数的にも割合としても一貫して減少してきた」という点が引っかかる。賃金は上がらないのに、就業者数、働く意欲のある人が増えているのはなぜか。非正規雇用を積極的に受け入れて働く人が増えたのはなぜか。
 最近でも、外国人技能実習生に失踪した理由を尋ねたアンケート結果が、ゆがめられていたという問題が発覚した。疑り深い見方をすれば、「非正規で働く理由」という主観的な事柄は、数字を操作しやすいのではないだろうか(他のデータとの不整合がわかりにくい)。
 考えすぎ? でも今の政府のデータなんて、これくらい疑ってもいいでしょ。

 

帳簿の世界史 (文春文庫 S 22-1)

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 追記。
 ツイートのまとめもつくった。こちらのまとめでは、新たになんばりょうすけ氏への返信を収録した。

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