馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

微細なリアル。「SSSS.GRIDMAN」第8回の感想。

 第8回見た。敵役である新条アカネは、最初「なんでこんなサイコパスなんだ」と思ったが、主人公たちのいる世界がアカネによって作られた世界らしいので、アカネにとって街の人間はゲームデータのように消す(殺す)のがためらいないのだと思われる。
 このアニメの日常描写が丁寧なのは、アカネという「神=造物主」の傲慢さに対して、造物主を置いてけぼりにして微細なリアルを生きる登場人物を対置しているためだろう。またそれでこそ、町と人を守ろうとするヒーローに意味がある。
 そんなに深読みする必要もないだろうが、「アカネに真実をなかなか聞き出せない」といった登場人物たちの中途半端な言動も、「虚構世界で役割をこなすだけではない」という象徴かもしれない。
 登場人物が合理的思考だけで行動すれば、ストーリーはスイスイ進むが、登場人物は生きた人間ではなく作品世界の駒になってしまう。「なろう系」と笑われるような一群の作品は、主人公に都合よく話が進む典型だが、「デスノート」みたいに緻密な頭脳戦の作品でも、登場人物がコマであることに変わりはない。

 エモーショナルなED曲に乗っかって、学園祭をエンジョイする登場人物たちと、欠席して一人部屋で寂しく虚脱感を味わうアカネは、わかりやすい対比だった。