馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

731部隊出身者の戦後と論文。

 早朝に、731部隊の名簿が公開された、というニュースが流れていた。日本では、欧米のように「公文書は×年たったら公開しなければいけない」といった法律がないので、政府が保管している戦前の公文書が、ずーーーっと公開されないままでいることも珍しくない。
 このニュースに便乗して、またぞろ「人体実験の証拠はない」という困った人がワラワラいる。731部隊の人体実験は、前に書いたヒル・レポートのみならず、すでに蓋然性の高い複数の証拠がある。
 戦後、部隊出身者が学会誌に寄せた論文では、実験動物が「猿」となっているが、実際には体温の違いなどから、これは人間であったと歴史家は指摘している。(教育史料出版会「歴史の事実をどう認定しどう教えるか」28ページ)
 人体実験しないと得られないデータを使って、彼らは医学界で出世した。

 「歴史の事実をどう認定し どう教えるか」は、731部隊南京事件、「従軍慰安婦」と、それぞれ激しい論争を巻き起こしている歴史トピックについて、左翼側の歴史家たちが右翼・保守派に反論した内容と、学校授業の取り組みからなる本。三つのトピックについて、簡潔なまとめが読める。詳しいことは、著者のそれぞれの本を読めばよい。

 ヒル・レポートについては、こちら。

「善良な日本人」だからこそ (付記、731部隊) - 犬沼トラノオ日記

補足。人体実験の決定的証拠について。 - 犬沼トラノオ日記